カカシの病室から出てイルカが最初にしたことは、綱手への重要機密事項の確約だった。
先に病室を出た綱手を追いかけて、サクヤの出生の秘密を他言無用と取り付けたイルカは、それでいいのか?と問う綱手に頷いた。
瞳術に掛かった以上、記憶は一生戻らない可能性のほうが高い。
もし男と子供をなしたことを知れば、カカシはイルカを気味悪がるだろう。
だって、自分だったらやはり戸惑うし、いい思いはしないだろうと思うのだ。
ズキリと痛む胸を宥めて、イルカはそういう選択をした。
事務方の権限をフル活用し、空きのあるアカデミーの寮へ転居手続きの資料を作成すると、家に帰って当座に必要な物をとりあえずダンボールに詰めた。
家にあるものはほとんどカカシが一緒に住むために購入してくれたもので、イルカが持ってきた物は少ない。
荷造りは短時間でほぼ完了した。
夜逃げ同然の引っ越しにも、急な転居が多い里では不審がられることはない。
そして、一番の難題。
サクヤだ。
はたけサクヤの名前のとおり、カカシの籍に入っているサクヤを連れて行くことは出来ない。
このままカカシに育てさせるか、なんとか今まで通りイルカが面倒を見れるように話し合うか。
犬のぬいぐるみを抱いたまま、スヤスヤと眠る可愛い我が子の寝顔を見つめながら、イルカは盛大なため息を付いた。
*****
迎えに行った病院で、退院の用意を済ませていたカカシを連れて家に戻った。
「ここに住んでたんですか?」
元々住んでいた上忍寮の記憶しかないカカシが問いかけるのに、コクリと頷く。
不審がるのはおかしくはない。
今は正規部隊に所属しているとはいえ、外勤の多い戦忍だったカカシが一人で住むには広すぎる家だ。
ましてや一軒家など普通は必要もない。
キョロキョロと見渡して、カカシはふむと頷いた。
「かー」
8匹の犬のぬいぐるみから、一番のお気に入りのパグ犬を差し出してサクヤが遊ぼうとカカシを誘う。
そんな子供に苦笑して、小さな身体を抱き上げた。
「・・・確かに似てますねぇ」
【サクヤ】と言います。
そうイルカに告げられた子供の両脇に手を突っ込んで抱き上げたまま、ブラブラと揺らして呟く。
外見だけを見たら、瓜二だ。
木の葉でも珍しい銀髪は、里ではこの二人しか居ない。
「母親は?」
当然のことを聞かれて、イルカはギクリと顔を強張らせた。
「存じません」
「どういうこと?」
「・・・この子だけを連れて来られたので・・・」
「ふーん」
「やん」
身体が不安定なのが怖いのだろう。
へにゃりと眉毛を下げてベソをかくサクヤを抱いてやろうと手を伸ばす。
いそいそとイルカの元へとやってきたサクヤが、ペタリと胸元に柔らかい頬をつけた。
「・・・この子の母親の件は、里の重要機密事項に指定されています」
「なにそれ?」
「機密事項については、カカシさんもご存知のとおり、閲覧権限は限られた方たちのみにしかありません」
「・・・父親のオレにも?」
もっともな問いかけをされて、イルカは頷いた。
機密事項なのは本当のことだ。
そして、こう言っておけば誰かに尋ねることもないだろう。
もちろんカカシなら、内部に潜入し書類を盗み出すことは不可能ではないだろうが、そこまではしないような気がした。
そう。
昨日からずっと気にかかっていたこと。
今のカカシには、サクヤに対する興味が全くないのだ。
「・・・なんで子供なんてつくったんだか」
ボソリと呟いた言葉に目を見開いた。
明らかに疎ましいと響いた口調に胸が痛む。
腕の中のサクヤをギュッと抱きしめてイルカはカカシの顔を見ないようにした。
口調だけでなく、その瞳までサクヤをそんな眼で見つめていたら・・・。
喉の奥に苦いものを感じて、イルカは無意識にギリっと歯を食いしばった。
「いー・・」
「ん~? 」
眠くなってきたのか、ペタリと頬をつけたまま名前を呼ぶサクヤに返事を返す。
身体が熱くなって、トロトロと瞼を閉じようとするサクヤの体を抱きしめて、ゆっくりと揺すってやった。
「懐いてるんですね」
オレよりも。
そんな言葉に苦笑した。
「イルカ先生が面倒を見ててくれたんですか?」
「ええ、まぁ・・カカシさんが任務の時だけですけれど」
「何でまた?」
自分たちの関係といえば、イルカの教え子が部下であるという繋がりだけだったはずだ。
カカシがそう訝しがるのも当然だ。
「・・・あ~、なんか出会った時からこうべったり懐かれてまして」
べったりの様子に納得してあぁと呟く。
子供好きってバレちゃうんですかねぇ。
ハハハと乾いた笑いを浮かべながら、教師であることをフル活用してひねり出した言葉だったが、カカシは何の疑問もなく頷いた。
「面倒かけてたんですね」
内勤が、けして時間を持て余しているわけではないと知っていてかけてくれる言葉だ。
これは全ての上忍が感じてくれることではない。
そんなところは記憶を失っていても変わらない事にホッとした。
「あの・・・」
「ん?」
「これからも、カカシさんが任務の時は預かりますので」
本題はここだった。
カカシの記憶がない以上、ここに共に住むのはおかしい。
けれどサクヤと離れることなんて考えたくなかった。
「そんな、イルカ先生に迷惑をかけるわけにはいきません」
「いえッ! 子供の世話は慣れてますから・・」
「子供って・・・慣れてるのはアカデミー生でしょ?」
少し呆れたような口調。
あっさりと断られそうな雰囲気に焦った。
「でも・・・」
「記憶を失う前のオレが、何でイルカ先生にこいつを押し付けてたのかは知りませんが、先生だって仕事があるじゃない」
ぐうの音もでない反論に、イルカは言葉を失った。
サクヤを抱きしめたまま俯いてしまったイルカを、カカシは不思議な気持ちで見つめた。
お人好しで人情味あふれる人だとは思っていたけれど、まさか他人の子供の面倒まで見ていたなんて。
本当に良い人過ぎて、何処かの悪いヤツに良いように利用されるんじゃないかと心配になる。
ま、そんなことを思いつつ自分も利用していたのかもしれないけれどと、少し反省してウロウロと視線を彷徨わせるイルカを見つめた。
「・・では・・、今日だけは、この子を預かっても良いですか・・?」
「えーっと・・・」
話を聞いていたのだろうか?
困り顔のカカシに、必死になって言い募った。
「カカシさんは戻って来られたばかりですし、記憶もないならこの子の面倒は見られないでしょう?」
「そりゃまぁ」
いきなりお前の子だ、なんて言われて戸惑っていたところだ。
もちろん子育てなんてしたこともないカカシには、イルカの申し出はありがたかった。
甘えてしまっていいのだろうか?
そう考えて、目の前のイルカがあまりにも悲壮な顔をしていることに気づく。
断ったら泣くんじゃないか?
そんなふうに考えて、まさかそんなと思い直した。
せっかく申し出てくれているのだ。
ここはありがたくお言葉に甘えようじゃないか。
カカシは意外と適当な男だった。
「じゃあ、お願いしても?」
「勿論ですッ!」
ホッとした顔で請け負って、ニコリと笑った表情にドキリとした。
眠る子供の髪を優しく撫ぜて微笑む姿に何ともいえない気分になる。
何だか居心地の悪い気分になって、カカシは急いで視線を逸らせたのだった。
*****
失礼しますと直角に頭を下げて家を出て行くイルカを、ぼんやりと見送った。
一人で住むには広い家を見渡して、スンッと臭いを嗅ぐ。
「・・・・・」
部屋の其処此処に、確かに子供の甘ったるいような匂いが感じられる。
「でも・・・それとはまた別の・・・」
そう。
先ほどまでここに居たイルカの匂いも感じられて、カカシは小さく小首を傾げた。
忍びだから、体臭的なものは無い。
しかし、明らかについ最近までここで暮らしていたような気配が感じられるのだ。
「・・・イルカ先生と・・・?」
まさか。
この自分が、他人と暮らすなんて、いったいどんな関係だというのだろう。
第一その本人はちゃんと自分の家へと帰っていったじゃないか。
軽く首を左右に振って、カカシは苦笑した。
子供やイルカの気配に溢れた家で、ポツンと一人取り残されたような気分になって、小さく溜息をつく。
「・・・上忍寮、手続きしてもらおうかなぁ」
何だかここに一人で住みたくなくて、そう呟くと広い室内を見渡した。
チャクラが完全に戻るまでは里内待機の身だ。
考えるのは後にして、とりあえず寝るかと歩き出して、ふと寝室の場所を身体が覚えていることに気づく。
「ふーん」
ここに暮らしていたことは間違いないようだ。
なんとなく納得して、後ろを振り返った。
物音一つしない部屋の中は、何故か寂しく物悲しいように感じられた。
「・・・変な感じ・・・」
やはり上忍寮に戻ろうと決意して、カカシはボスンっとベッドに横になった。
*****
ダンボールが数個積み上げたままのアカデミー寮に帰って、眠るサクヤの背中を撫ぜながら、イルカは小さな溜息を付いた。
勢いで押し切って連れて帰っては来たものの、あの様子では今後イルカにサクヤを預けるということはなさそうだ。
そもそも女遊びで浮名を流していた男だ。
それが何をトチ狂ったのか同性の、しかも中忍の自分とこんな関係になるなんて、あの頃のカカシは一欠片も思ったことはないだろう。
・・・もう一度女体化すれば、カカシの目にとまるだろうか?
そう考えて、馬鹿な事をと首をふる。
そんなことをしたって無駄に決まってる。
「我ながら女々しいな・・・」
「・・・いー・・」
「どうした?」
眠っていたはずのサクヤが、ぼんやりと瞳を開いてイルカを見ていた。
イルカの心の機微に聡い子だ。
不安になると、途端にサクヤの感情も不安定になる。
「・・ここにいるよ」
「んー・・」
ポンポンと背中を叩いて眠りを促してやる。
まだ夢と現を彷徨っているのか、ふにゃふにゃと何かを言いながら瞼を閉じるサクヤの柔らかな銀髪に触れる。
カカシにそっくりな我が子。
だけど、もう一緒にはいられない。
「・・・・・」
深い溜息をついて、無心に眠るサクヤの寝顔をイルカは一晩中見続けたのだった。
先に病室を出た綱手を追いかけて、サクヤの出生の秘密を他言無用と取り付けたイルカは、それでいいのか?と問う綱手に頷いた。
瞳術に掛かった以上、記憶は一生戻らない可能性のほうが高い。
もし男と子供をなしたことを知れば、カカシはイルカを気味悪がるだろう。
だって、自分だったらやはり戸惑うし、いい思いはしないだろうと思うのだ。
ズキリと痛む胸を宥めて、イルカはそういう選択をした。
事務方の権限をフル活用し、空きのあるアカデミーの寮へ転居手続きの資料を作成すると、家に帰って当座に必要な物をとりあえずダンボールに詰めた。
家にあるものはほとんどカカシが一緒に住むために購入してくれたもので、イルカが持ってきた物は少ない。
荷造りは短時間でほぼ完了した。
夜逃げ同然の引っ越しにも、急な転居が多い里では不審がられることはない。
そして、一番の難題。
サクヤだ。
はたけサクヤの名前のとおり、カカシの籍に入っているサクヤを連れて行くことは出来ない。
このままカカシに育てさせるか、なんとか今まで通りイルカが面倒を見れるように話し合うか。
犬のぬいぐるみを抱いたまま、スヤスヤと眠る可愛い我が子の寝顔を見つめながら、イルカは盛大なため息を付いた。
*****
迎えに行った病院で、退院の用意を済ませていたカカシを連れて家に戻った。
「ここに住んでたんですか?」
元々住んでいた上忍寮の記憶しかないカカシが問いかけるのに、コクリと頷く。
不審がるのはおかしくはない。
今は正規部隊に所属しているとはいえ、外勤の多い戦忍だったカカシが一人で住むには広すぎる家だ。
ましてや一軒家など普通は必要もない。
キョロキョロと見渡して、カカシはふむと頷いた。
「かー」
8匹の犬のぬいぐるみから、一番のお気に入りのパグ犬を差し出してサクヤが遊ぼうとカカシを誘う。
そんな子供に苦笑して、小さな身体を抱き上げた。
「・・・確かに似てますねぇ」
【サクヤ】と言います。
そうイルカに告げられた子供の両脇に手を突っ込んで抱き上げたまま、ブラブラと揺らして呟く。
外見だけを見たら、瓜二だ。
木の葉でも珍しい銀髪は、里ではこの二人しか居ない。
「母親は?」
当然のことを聞かれて、イルカはギクリと顔を強張らせた。
「存じません」
「どういうこと?」
「・・・この子だけを連れて来られたので・・・」
「ふーん」
「やん」
身体が不安定なのが怖いのだろう。
へにゃりと眉毛を下げてベソをかくサクヤを抱いてやろうと手を伸ばす。
いそいそとイルカの元へとやってきたサクヤが、ペタリと胸元に柔らかい頬をつけた。
「・・・この子の母親の件は、里の重要機密事項に指定されています」
「なにそれ?」
「機密事項については、カカシさんもご存知のとおり、閲覧権限は限られた方たちのみにしかありません」
「・・・父親のオレにも?」
もっともな問いかけをされて、イルカは頷いた。
機密事項なのは本当のことだ。
そして、こう言っておけば誰かに尋ねることもないだろう。
もちろんカカシなら、内部に潜入し書類を盗み出すことは不可能ではないだろうが、そこまではしないような気がした。
そう。
昨日からずっと気にかかっていたこと。
今のカカシには、サクヤに対する興味が全くないのだ。
「・・・なんで子供なんてつくったんだか」
ボソリと呟いた言葉に目を見開いた。
明らかに疎ましいと響いた口調に胸が痛む。
腕の中のサクヤをギュッと抱きしめてイルカはカカシの顔を見ないようにした。
口調だけでなく、その瞳までサクヤをそんな眼で見つめていたら・・・。
喉の奥に苦いものを感じて、イルカは無意識にギリっと歯を食いしばった。
「いー・・」
「ん~? 」
眠くなってきたのか、ペタリと頬をつけたまま名前を呼ぶサクヤに返事を返す。
身体が熱くなって、トロトロと瞼を閉じようとするサクヤの体を抱きしめて、ゆっくりと揺すってやった。
「懐いてるんですね」
オレよりも。
そんな言葉に苦笑した。
「イルカ先生が面倒を見ててくれたんですか?」
「ええ、まぁ・・カカシさんが任務の時だけですけれど」
「何でまた?」
自分たちの関係といえば、イルカの教え子が部下であるという繋がりだけだったはずだ。
カカシがそう訝しがるのも当然だ。
「・・・あ~、なんか出会った時からこうべったり懐かれてまして」
べったりの様子に納得してあぁと呟く。
子供好きってバレちゃうんですかねぇ。
ハハハと乾いた笑いを浮かべながら、教師であることをフル活用してひねり出した言葉だったが、カカシは何の疑問もなく頷いた。
「面倒かけてたんですね」
内勤が、けして時間を持て余しているわけではないと知っていてかけてくれる言葉だ。
これは全ての上忍が感じてくれることではない。
そんなところは記憶を失っていても変わらない事にホッとした。
「あの・・・」
「ん?」
「これからも、カカシさんが任務の時は預かりますので」
本題はここだった。
カカシの記憶がない以上、ここに共に住むのはおかしい。
けれどサクヤと離れることなんて考えたくなかった。
「そんな、イルカ先生に迷惑をかけるわけにはいきません」
「いえッ! 子供の世話は慣れてますから・・」
「子供って・・・慣れてるのはアカデミー生でしょ?」
少し呆れたような口調。
あっさりと断られそうな雰囲気に焦った。
「でも・・・」
「記憶を失う前のオレが、何でイルカ先生にこいつを押し付けてたのかは知りませんが、先生だって仕事があるじゃない」
ぐうの音もでない反論に、イルカは言葉を失った。
サクヤを抱きしめたまま俯いてしまったイルカを、カカシは不思議な気持ちで見つめた。
お人好しで人情味あふれる人だとは思っていたけれど、まさか他人の子供の面倒まで見ていたなんて。
本当に良い人過ぎて、何処かの悪いヤツに良いように利用されるんじゃないかと心配になる。
ま、そんなことを思いつつ自分も利用していたのかもしれないけれどと、少し反省してウロウロと視線を彷徨わせるイルカを見つめた。
「・・では・・、今日だけは、この子を預かっても良いですか・・?」
「えーっと・・・」
話を聞いていたのだろうか?
困り顔のカカシに、必死になって言い募った。
「カカシさんは戻って来られたばかりですし、記憶もないならこの子の面倒は見られないでしょう?」
「そりゃまぁ」
いきなりお前の子だ、なんて言われて戸惑っていたところだ。
もちろん子育てなんてしたこともないカカシには、イルカの申し出はありがたかった。
甘えてしまっていいのだろうか?
そう考えて、目の前のイルカがあまりにも悲壮な顔をしていることに気づく。
断ったら泣くんじゃないか?
そんなふうに考えて、まさかそんなと思い直した。
せっかく申し出てくれているのだ。
ここはありがたくお言葉に甘えようじゃないか。
カカシは意外と適当な男だった。
「じゃあ、お願いしても?」
「勿論ですッ!」
ホッとした顔で請け負って、ニコリと笑った表情にドキリとした。
眠る子供の髪を優しく撫ぜて微笑む姿に何ともいえない気分になる。
何だか居心地の悪い気分になって、カカシは急いで視線を逸らせたのだった。
*****
失礼しますと直角に頭を下げて家を出て行くイルカを、ぼんやりと見送った。
一人で住むには広い家を見渡して、スンッと臭いを嗅ぐ。
「・・・・・」
部屋の其処此処に、確かに子供の甘ったるいような匂いが感じられる。
「でも・・・それとはまた別の・・・」
そう。
先ほどまでここに居たイルカの匂いも感じられて、カカシは小さく小首を傾げた。
忍びだから、体臭的なものは無い。
しかし、明らかについ最近までここで暮らしていたような気配が感じられるのだ。
「・・・イルカ先生と・・・?」
まさか。
この自分が、他人と暮らすなんて、いったいどんな関係だというのだろう。
第一その本人はちゃんと自分の家へと帰っていったじゃないか。
軽く首を左右に振って、カカシは苦笑した。
子供やイルカの気配に溢れた家で、ポツンと一人取り残されたような気分になって、小さく溜息をつく。
「・・・上忍寮、手続きしてもらおうかなぁ」
何だかここに一人で住みたくなくて、そう呟くと広い室内を見渡した。
チャクラが完全に戻るまでは里内待機の身だ。
考えるのは後にして、とりあえず寝るかと歩き出して、ふと寝室の場所を身体が覚えていることに気づく。
「ふーん」
ここに暮らしていたことは間違いないようだ。
なんとなく納得して、後ろを振り返った。
物音一つしない部屋の中は、何故か寂しく物悲しいように感じられた。
「・・・変な感じ・・・」
やはり上忍寮に戻ろうと決意して、カカシはボスンっとベッドに横になった。
*****
ダンボールが数個積み上げたままのアカデミー寮に帰って、眠るサクヤの背中を撫ぜながら、イルカは小さな溜息を付いた。
勢いで押し切って連れて帰っては来たものの、あの様子では今後イルカにサクヤを預けるということはなさそうだ。
そもそも女遊びで浮名を流していた男だ。
それが何をトチ狂ったのか同性の、しかも中忍の自分とこんな関係になるなんて、あの頃のカカシは一欠片も思ったことはないだろう。
・・・もう一度女体化すれば、カカシの目にとまるだろうか?
そう考えて、馬鹿な事をと首をふる。
そんなことをしたって無駄に決まってる。
「我ながら女々しいな・・・」
「・・・いー・・」
「どうした?」
眠っていたはずのサクヤが、ぼんやりと瞳を開いてイルカを見ていた。
イルカの心の機微に聡い子だ。
不安になると、途端にサクヤの感情も不安定になる。
「・・ここにいるよ」
「んー・・」
ポンポンと背中を叩いて眠りを促してやる。
まだ夢と現を彷徨っているのか、ふにゃふにゃと何かを言いながら瞼を閉じるサクヤの柔らかな銀髪に触れる。
カカシにそっくりな我が子。
だけど、もう一緒にはいられない。
「・・・・・」
深い溜息をついて、無心に眠るサクヤの寝顔をイルカは一晩中見続けたのだった。
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