隠し部屋
ここは【隠し部屋】です!
ちょっと表ではどうかな?と言うような内容のモノをUPしますので閲覧はご注意ください。
問い合わせいただくことがあるので、PASSのヒント(kkir◯◯◯◯◯◯◯◯です)
※は大人向けです。
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※は大人向けです。
それからのイルカの行動は早かった。
暗黙の了解を良いことに、職権乱用で架空の依頼書をでっち上げたイルカは、火急の任務と称して早々に阿吽の門をくぐったのだ。
あの時、三代目より見せられた地図にはいくつかの起点となる印が記されていた。それを瞬時に頭へと叩き込み、完遂の為の最短ルートを目的地までの道すがら何度も練り直した。そして導き出した答は、暗部が潜伏している宿に忍び込み、情報を得ることだった。
後は――。
カサリ。ポケットに忍ばせた手紙がタイチの気持ちを代弁するかのように不安げな音を立てる。
三代目はタイチが草であるという確証が持てないと言っていた。それならまだ、彼を助けられるのぞみがあるということだ。
「…絶対に連れて帰ってやるからな」
なによりこの手紙をイルカに残したことこそが、タイチが草ではない証拠だと思った。
城郭を中心に碁盤の目状に整えられた古い町並みの一角にある、城下でもひときわ繁盛を誇る老舗宿屋「春華屋」が火影に教えられた暗部の潜伏拠点だった。
宿の玄関先へと到着したイルカは、自らもそこに身を潜ませることにして、ひとまずは案内された部屋の中へと身を落ち着けた。
さて、本題はここからだ。
イルカは部屋に備え付けられた鏡の前に座り込むと、一回り小さな女に变化した自分の姿を複雑な表情で見やった。
広く丸い額と潤んだ瞳に、ツンと上を向いた鼻先。頬を横切る傷痕は跡形なく消えさり、唇は艶を帯びて桜色に染まっている。变化の術は得意分野だし、見た目だけならこれがイルカだとは絶対に気づかれないほど完璧な女だ。
「…こんなもんかな?」
過髪に映る自分に小さなため息。
本来ならこんな術、使わないで済むならそれにこしたことはない。しかしここは暗部が駐留する本陣だ。チャクラと面の割れている身では、自由に動くことすらままならない。
より意外性があり、相手を油断させられる術。
となれば、イルカに残された選択肢は女体变化しかなかったとはいえ…。
「う~ん」
顔はそこそこ良くできた気がするが、問題は身体だ。万が一戦闘が起こった場合を考えて胸は小さめに成形し、チャクラは自分のものを変容させて固定した。
「…やっぱ物足りないかなぁ」
自分で自分の胸をふにふにと揉んでみて、鏡に写った滑稽な姿に脱力した。
これは房中任務でもないのだから、胸の大きさなど関係ないのに。
何をやってんだ俺は。
気を引き締めなければ。
髪の乱れを整え、襟を合わせて着崩れた着物を手早く直すと、イルカは音も立てずに部屋を後にした。
*****
要人の常宿としても有名な春華屋は、緑豊かな坪庭と品よく清潔に手入れされた客室、源泉かけ流しの温泉を持つ城下でも屈指の人気宿だ。増改築を重ねたことにより、宿の内部は外側から想像もできないほど複雑に入り組んでおり、その構造の難解さは忍であるイルカをも辟易とさせた。
敵の襲撃に備えた造り。この宿が要人に選ばれる理由がわかる気がした。
それにしてもだ。
この宿に滞在し、虱潰しに部屋を捜索してはや3日。
暗部の動きも辿れないどころか、肝心のタイチ達の気配すらつかめないときては、さすがのイルカにも焦りが滲んでくる。
まさかもう国境を超えてしまったか。
そうなるとイルカには追跡することもできなくなる。
急がなければ。
焦りを滲ませながら部屋の前に立ち、周りに人の気配を感じないのを確認する。そのまま身体を滑り込ませるようにして、こっそりと中へ忍び込んだ。
「ここも違う…?」
こざっぱりした部屋の中は綺麗に片付けられており、一見したところ使われてはいない部屋のようだった。
ここもハズレか。
本当にココが暗部の拠点なのかも疑わしくなってきた。
もう一度部屋に戻って熟考しなくては。
諦めて踵を返そうとした瞬間、薄皮をぴりりと走った緊張感に、イルカは微動だにしないまま意識を四隅へと走らせた。
「………」
賑やかすぎる宿の中で、物音一つ聞こえない部屋。
この感覚をイルカはつい先日にも味わったことがあった。
そうだ。間違いない。タイチの家で……。
「―――ッ!」
しまったと思った時には既に遅かった。
喉元に鋭利な刃物の冷えた感触。一瞬のうちに背後を取られ、全身から一気に汗が吹き出してくる。
「……あ……」
「何か用ですか?」
耳に届いた聞き覚えのある声に、イルカは忸怩たる思いで唇を噛み締めた。
「最近なんだかうるさいネズミがチョロチョロしているなぁと思っていたんですよねぇ」
およそ危機感など感じない。
イルカの喉元に刃物を突き立てたまま、のんびりと男がそう口にした。
「私は別に……」
大丈夫だ。この男はただ部屋に侵入した不審者を捕らえただけ。
一般客らしく振る舞って、解放を促せば逃れるすべはあるはずだ。
イルカは恐怖に怯えるフリをしながら、背後の男を窺った。
「すみません…へ、部屋を間違えてしまったみたいでっ」
「部屋を?」
「そ、そうです」
「あ――複雑ですもんねぇ、この宿」
「は、はい。あの…ですからこの物騒なもの…」
チラリと視線を喉元の刃物に向け、ごくりと喉を上下した。
これを真横に引かれたら、あっという間にイルカはこの世からおさらばだ。
「あぁ、怖がらせてごめーんね」
突き立てられた刃物に震え上がってみせれば、あっさりと男は刃物を喉元から離した。しかし拘束を解く気はないらしく、ほっとして力が抜けたイルカの肩に手を置くと、耳元にすっと顔を寄せてきた。
「どこの部屋と間違ったんだか知らないけど」
「………え…?」
「春を売る娼妓にしては、貧弱すぎやしませんか?」
「ヒッ!!」
ぐいっと片手で胸を揉まれ、声にならない悲鳴が漏れた。
「ハハ、なんですか、その生娘みたいな反応――…」
「――こ…のやろ…っ!」
ぶんっと振り上げた手は既の所で躱された。逃げるために重心を低くし、勢いをつけて踏み出せば、先読みした男によってあっさりと阻まれてしまう。まるで子供と組み手を楽しんでいるようだ。体勢を立て直す隙きすら与えられない。
「……ッ……」
このままでは逃げられもせず、無駄に体力を消耗するだけだ。
イルカは瞬時に身体を反転させ、たった一つの逃走経路である扉を目指して脱兎のごとく駆け出した。
「逃さないよ」
背後から男の落ち着き払った声が聞こえ、視界の端に刃物を持った手が無造作に振り下ろされるのが映る。
「――クッ!」
着物の裾をまくり上げ、太腿に仕込んでいたクナイを指に引っ掛ける。
ガキッという金属がぶつかる音とともに、素顔を晒したカカシと目があった。
薄暗い部屋の中でも目を引く銀髪。声で彼だと確信していたけれど、実際に目で認識するのとでは全く違う。
しかも、ただでさえ圧倒的な力の差があるというのに、女体変化しチャクラを変容させた今の状態では、この男に敵うはずもない。
自覚してしまう。
逃れることなどとうてい無理なのだと。
「やっぱりねぇ」
「な、にが…っ」
「アンタ、どうもオレと同じ匂いがすると思った」
ギリギリと力で圧倒しながら、カカシが余裕の表情を見せる。
まるでお前など相手にならないとわからしめるように。
「……っ」
本当に嫌な男だ。
いつもいつも、お前など取るに足らないモノなのだと見せつけられる。
「どこの忍か知らないけれど…、こんなところまで乗り込んでくるなんて」
「何を…言ってるのか…っ」
「ほら、もう少し頑張らないと、その可愛い顔に傷が付きますよ」
抵抗など無駄だと言わんばかりに、カカシの顔が近づいてくる。
眼前に映るのは磨き抜かれた鋭利なクナイ。じわじわと力で押され、焦りと緊張感に息を詰めた。
「なーんてね」
ふ、とカカシが人好きのする笑顔を浮かべた瞬間。
知らず身体の力が抜けた。
「わっ!」
手にしたクナイを弾き飛ばされ、足を引っ掛けられた身体が重心を失って後ろに倒れ込む。
どぉっという音とともに畳に身体を打ち付けられ、呻く間もなく顔の真横に尖った刃物が打ち込まれた。
「……――ッ!」
「…絶体絶命ってところですかね」
言いしれぬ恐怖が身体を包む。
刃物から視線を外し、恐る恐る目の前の男へと移した。そうして初めて、カカシが冷ややかな眼で自分を見ていることに気づいたのだ。
暗黙の了解を良いことに、職権乱用で架空の依頼書をでっち上げたイルカは、火急の任務と称して早々に阿吽の門をくぐったのだ。
あの時、三代目より見せられた地図にはいくつかの起点となる印が記されていた。それを瞬時に頭へと叩き込み、完遂の為の最短ルートを目的地までの道すがら何度も練り直した。そして導き出した答は、暗部が潜伏している宿に忍び込み、情報を得ることだった。
後は――。
カサリ。ポケットに忍ばせた手紙がタイチの気持ちを代弁するかのように不安げな音を立てる。
三代目はタイチが草であるという確証が持てないと言っていた。それならまだ、彼を助けられるのぞみがあるということだ。
「…絶対に連れて帰ってやるからな」
なによりこの手紙をイルカに残したことこそが、タイチが草ではない証拠だと思った。
城郭を中心に碁盤の目状に整えられた古い町並みの一角にある、城下でもひときわ繁盛を誇る老舗宿屋「春華屋」が火影に教えられた暗部の潜伏拠点だった。
宿の玄関先へと到着したイルカは、自らもそこに身を潜ませることにして、ひとまずは案内された部屋の中へと身を落ち着けた。
さて、本題はここからだ。
イルカは部屋に備え付けられた鏡の前に座り込むと、一回り小さな女に变化した自分の姿を複雑な表情で見やった。
広く丸い額と潤んだ瞳に、ツンと上を向いた鼻先。頬を横切る傷痕は跡形なく消えさり、唇は艶を帯びて桜色に染まっている。变化の術は得意分野だし、見た目だけならこれがイルカだとは絶対に気づかれないほど完璧な女だ。
「…こんなもんかな?」
過髪に映る自分に小さなため息。
本来ならこんな術、使わないで済むならそれにこしたことはない。しかしここは暗部が駐留する本陣だ。チャクラと面の割れている身では、自由に動くことすらままならない。
より意外性があり、相手を油断させられる術。
となれば、イルカに残された選択肢は女体变化しかなかったとはいえ…。
「う~ん」
顔はそこそこ良くできた気がするが、問題は身体だ。万が一戦闘が起こった場合を考えて胸は小さめに成形し、チャクラは自分のものを変容させて固定した。
「…やっぱ物足りないかなぁ」
自分で自分の胸をふにふにと揉んでみて、鏡に写った滑稽な姿に脱力した。
これは房中任務でもないのだから、胸の大きさなど関係ないのに。
何をやってんだ俺は。
気を引き締めなければ。
髪の乱れを整え、襟を合わせて着崩れた着物を手早く直すと、イルカは音も立てずに部屋を後にした。
*****
要人の常宿としても有名な春華屋は、緑豊かな坪庭と品よく清潔に手入れされた客室、源泉かけ流しの温泉を持つ城下でも屈指の人気宿だ。増改築を重ねたことにより、宿の内部は外側から想像もできないほど複雑に入り組んでおり、その構造の難解さは忍であるイルカをも辟易とさせた。
敵の襲撃に備えた造り。この宿が要人に選ばれる理由がわかる気がした。
それにしてもだ。
この宿に滞在し、虱潰しに部屋を捜索してはや3日。
暗部の動きも辿れないどころか、肝心のタイチ達の気配すらつかめないときては、さすがのイルカにも焦りが滲んでくる。
まさかもう国境を超えてしまったか。
そうなるとイルカには追跡することもできなくなる。
急がなければ。
焦りを滲ませながら部屋の前に立ち、周りに人の気配を感じないのを確認する。そのまま身体を滑り込ませるようにして、こっそりと中へ忍び込んだ。
「ここも違う…?」
こざっぱりした部屋の中は綺麗に片付けられており、一見したところ使われてはいない部屋のようだった。
ここもハズレか。
本当にココが暗部の拠点なのかも疑わしくなってきた。
もう一度部屋に戻って熟考しなくては。
諦めて踵を返そうとした瞬間、薄皮をぴりりと走った緊張感に、イルカは微動だにしないまま意識を四隅へと走らせた。
「………」
賑やかすぎる宿の中で、物音一つ聞こえない部屋。
この感覚をイルカはつい先日にも味わったことがあった。
そうだ。間違いない。タイチの家で……。
「―――ッ!」
しまったと思った時には既に遅かった。
喉元に鋭利な刃物の冷えた感触。一瞬のうちに背後を取られ、全身から一気に汗が吹き出してくる。
「……あ……」
「何か用ですか?」
耳に届いた聞き覚えのある声に、イルカは忸怩たる思いで唇を噛み締めた。
「最近なんだかうるさいネズミがチョロチョロしているなぁと思っていたんですよねぇ」
およそ危機感など感じない。
イルカの喉元に刃物を突き立てたまま、のんびりと男がそう口にした。
「私は別に……」
大丈夫だ。この男はただ部屋に侵入した不審者を捕らえただけ。
一般客らしく振る舞って、解放を促せば逃れるすべはあるはずだ。
イルカは恐怖に怯えるフリをしながら、背後の男を窺った。
「すみません…へ、部屋を間違えてしまったみたいでっ」
「部屋を?」
「そ、そうです」
「あ――複雑ですもんねぇ、この宿」
「は、はい。あの…ですからこの物騒なもの…」
チラリと視線を喉元の刃物に向け、ごくりと喉を上下した。
これを真横に引かれたら、あっという間にイルカはこの世からおさらばだ。
「あぁ、怖がらせてごめーんね」
突き立てられた刃物に震え上がってみせれば、あっさりと男は刃物を喉元から離した。しかし拘束を解く気はないらしく、ほっとして力が抜けたイルカの肩に手を置くと、耳元にすっと顔を寄せてきた。
「どこの部屋と間違ったんだか知らないけど」
「………え…?」
「春を売る娼妓にしては、貧弱すぎやしませんか?」
「ヒッ!!」
ぐいっと片手で胸を揉まれ、声にならない悲鳴が漏れた。
「ハハ、なんですか、その生娘みたいな反応――…」
「――こ…のやろ…っ!」
ぶんっと振り上げた手は既の所で躱された。逃げるために重心を低くし、勢いをつけて踏み出せば、先読みした男によってあっさりと阻まれてしまう。まるで子供と組み手を楽しんでいるようだ。体勢を立て直す隙きすら与えられない。
「……ッ……」
このままでは逃げられもせず、無駄に体力を消耗するだけだ。
イルカは瞬時に身体を反転させ、たった一つの逃走経路である扉を目指して脱兎のごとく駆け出した。
「逃さないよ」
背後から男の落ち着き払った声が聞こえ、視界の端に刃物を持った手が無造作に振り下ろされるのが映る。
「――クッ!」
着物の裾をまくり上げ、太腿に仕込んでいたクナイを指に引っ掛ける。
ガキッという金属がぶつかる音とともに、素顔を晒したカカシと目があった。
薄暗い部屋の中でも目を引く銀髪。声で彼だと確信していたけれど、実際に目で認識するのとでは全く違う。
しかも、ただでさえ圧倒的な力の差があるというのに、女体変化しチャクラを変容させた今の状態では、この男に敵うはずもない。
自覚してしまう。
逃れることなどとうてい無理なのだと。
「やっぱりねぇ」
「な、にが…っ」
「アンタ、どうもオレと同じ匂いがすると思った」
ギリギリと力で圧倒しながら、カカシが余裕の表情を見せる。
まるでお前など相手にならないとわからしめるように。
「……っ」
本当に嫌な男だ。
いつもいつも、お前など取るに足らないモノなのだと見せつけられる。
「どこの忍か知らないけれど…、こんなところまで乗り込んでくるなんて」
「何を…言ってるのか…っ」
「ほら、もう少し頑張らないと、その可愛い顔に傷が付きますよ」
抵抗など無駄だと言わんばかりに、カカシの顔が近づいてくる。
眼前に映るのは磨き抜かれた鋭利なクナイ。じわじわと力で押され、焦りと緊張感に息を詰めた。
「なーんてね」
ふ、とカカシが人好きのする笑顔を浮かべた瞬間。
知らず身体の力が抜けた。
「わっ!」
手にしたクナイを弾き飛ばされ、足を引っ掛けられた身体が重心を失って後ろに倒れ込む。
どぉっという音とともに畳に身体を打ち付けられ、呻く間もなく顔の真横に尖った刃物が打ち込まれた。
「……――ッ!」
「…絶体絶命ってところですかね」
言いしれぬ恐怖が身体を包む。
刃物から視線を外し、恐る恐る目の前の男へと移した。そうして初めて、カカシが冷ややかな眼で自分を見ていることに気づいたのだ。
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