くしゃみをして目覚めたら、床の上だった。
腹は丸出しだし、頭は痛い。
床の上で一晩過ごした身体は起き上がるだけで痛みを伴ってきしんだ。

「・・・・・」

昨日は同僚たちとの飲み会で、浴びるほど呑んだ酒のせいだとこの現状は理解できる。

しかし・・・。

寝室のベッドに胡座をかいて、こちらを恨みがましく睨んでいる上忍様は一体どういうわけだろう・・・。

「・・・おはよう、ございます」
「・・・・」

挨拶したのにそのツンとした不機嫌な顔はどういうことだよ。

「え〜・・っと・・・」

ズキズキと痛む頭を押さえながら、イルカは昨夜のことを何とか思い出そうと額を押さえた。
花見を兼ねた同僚たちとの飲み会は、最高に楽しかった。
ビールから始まって、焼酎、日本酒と様々にチャンポンして呑んだ後は、皆でワイワイ歌いながら大盛況の内に宴会は幕を閉じたはずだ。
その後、フラフラ自宅までの帰り道でいのに会って・・・そうだ。
桜の枝を貰ったのだ。
自宅で花見もまたオツなもんだと、上機嫌で家まで帰ったのは覚えているのだが・・。

「・・・・・」

そういや、そこからは記憶が曖昧だ。
どうやって部屋まで入ったんだろうと考えて、不機嫌な顔を隠しもしない上忍に思い当たる。
この部屋にいるということは、たぶん彼が部屋まで運んでくれたはずだ。
それなのに床で寝てるということは・・・。

「あ〜・・・あの・・・何か粗相を・・・?」
「・・・覚えてないんですか?」

ジトッと睨みつける視線が痛い。
自他共に人格者だと認める上忍、はたけカカシはこうみえてイルカには意外と心が狭い。
これからネチネチいびられるかと思うと、少し憂鬱になってイルカはすいませんと頭を下げた。

「俺、なにかしましたか・・・?」
「キスしました」
「は!?」

思いもしないセリフに、思わずイルカは変な声を出した。
カカシはまだ不機嫌な顔をしたままだ。
キスしたのならなぜそんなに不機嫌なんだろうと思うものの、その先が怖くて聞きたくない。

「珍しく、あなたからの誘いに有頂天になったのに」

詰る口調がまたねちっこい。

「いざ本番で、泥酔です」
「・・・それは・・・その・・」
「そこからのオレの悶々とした一晩をどうしてくれるんですか」

そんなことを言われても、酔っ払っていたのだから仕方ないじゃないか。
という言い分も聞いてもらえそうもない雰囲気だ。

「・・・えーっと・・・」
「風呂に入りたいってイルカ先生が言うから、湯も沸かしました」
「それは、ありがとうございます」

素直に礼を言うも、厳しい視線は更に増すばかりだ。

「入ってませんけどね」

言い捨ててそっぽを向いてしまうカカシに、イルカはこっそりとため息をつく。

「溜息ですか」

目ざといカカシに見咎められ、イルカはげっと声を出した。
これはなかなか機嫌をなおして貰えそうもない。

諦めて、イルカはのそりと立ち上がった。

「どこに逃げる気ですか?」
「・・・えっと・・せっかく湯を沸かしてもらったようなので・・」

風呂に・・と続けた言葉に、もう冷めてますと尖った声が響く。

「・・身体洗いながら沸かします・・」

とにかくこの場から逃げ出そうと、風呂場に向かおうとしたイルカに、寝室から出てきたカカシが、先に風呂場へと行ってしまう。
なんだなんだと思う間もなく、「火遁」とう声が響き、あっという間に湯船から湯気が沸き出す。

凄い・・こんなことも出来るんだぁ、などと感心している場合じゃない。

さっさと服を脱ぎ出すカカシが、振り返って早くお前も服を脱げというばかりの視線を投げた。

「え!? カカシさんも入るんですか?」
「当たり前です」
「・・・この狭い風呂に?」
「文句あります?」

・・・文句、いえない状況ですよね。

諦めて、イルカはアンダーに手をかけた。



*****



イルカの家の風呂は狭い。
風呂自体が狭いのだから、もちろん湯船だって物凄く小さい。
・・・なのに、何故こんな小さくて狭い湯船に大の男二人が窮屈に入らなければならないのだろう。
背後から、ガッツリと抱きかかえられる格好で浸かった湯の中で、イルカは身動き出来ずにガクリとうなだれた。
背後のカカシは何故かすこぶる上機嫌だ。

時折イタズラに項に口付けられたりして、ビクビク身体を震わせながら我慢していると、調子に乗った手がスルリと前へと滑り込み、イルカのモノを握り込もうとする。

「・・ッ! ちょっと、やめてくださいよッ!!」
「良いでしょ」

笑うカカシがペロリとイルカの耳を舐った。

「アッ!!」
「ふふっ」

感じる耳の中に舌をねじ込まる。
前に回った掌に陰茎を擦られて、イルカは狼狽して後ろを振り向こうとするが、強い腕に抱きこまれて身動きができない。
そうこうするうちに腰に硬いものがあたり、イルカはギョッとした。

「アンタッ!! ・・あ、あたってるッ!!」
「気のせい、気のせい」
「・・気のせいじゃないッ!!」

ニヤニヤ笑うカカシが、わざと腰を押し付けるのに身悶えしてイルカは逃げようとした。

「・・挿れていい?」
「良い訳ないだろッ!」

ただでさえ薄い壁の家だ。
それにつけても風呂はとにかく声が響く。

「そんなこと言っても、挿れちゃうんだから」
「や・・やだやだッ!!」

暴れるイルカを押さえつけて、カカシは指先を蕾の周辺に彷徨わせると、ぐいっと指先を食い込ませた。

「あぁっ!!」
「お湯も入っちゃうね」
「やめっ・・・ッ、カカシさんッ!!!」

指と一緒に湯が体内に流れ込んできて、イルカは思わず息を止めた。

「駄目だよ。息はいて」
「うーーーッ」

項に口づけて、カカシが楽しげに笑う。
グチグチと動く指先が敏感な部分を探り当てるのに、イルカは顔を真赤にして湯の中のカカシの腕に爪をたてた。

「ツッ!!!」

カカシが怯んだ隙に、何とか逃げだそうと腰を上げた瞬間。
大きな掌がイルカの腰を掴んだ。
熱い肉塊が、弛んだ蕾に触れる。

「ーーーーアァッ!!!」

力づくで抱きこまれ、引き寄せられてイルカは絶叫した。



*****



朝っぱらから風呂の中でカカシに好きなようにされたイルカは、その後湯あたりして寝込んだ。
甲斐甲斐しく世話を焼く上機嫌なカカシに力いっぱい甘やかされ、まんざらでもない一日を過ごしたイルカだったが、翌朝鉢合わせた隣人に挨拶もそこそこに逃げられ、 非常に気まずい思いをしたことをここに記しておく。



おしまい♪
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。