同僚との飲み会の翌日。
ベッドの中でまどろみの中をウトウトと、夢と現をさまよっていたイルカの耳に馴染んだ声が聞こえてきた。
お邪魔しまーすという声とともに、カカシのいらっしゃいと迎える声が聞こえる。
声の主はナルト。
言わずと知れた二人の教え子だ。
「イルカ先生は?」
「まだ寝てるよ」
「もう昼だってばよ」
「昨夜は遅かったからね~」
もう少し寝かせてあげてと、恋人の優しい声がする。
「サク坊、お前の母ちゃんは寝坊助だってばよ」
おい、ナルト。
俺は断じて母ちゃんじゃねぇぞ。
イルカはまだはっきりとしない頭で教え子に突っ込んだ。
「なー!」
「う~」
言われてる意味の分からないサクヤが、ナルトに笑いかけられて楽しそうな声をあげていた。
サクヤが産まれてから、ナルトはこの家をよく訪れるようになった。
まぁ、昔から何かと言っては来ていたのだが。
カカシがイルカと綱手による約半年の報復任務につかされている間も、腹の膨れたイルカに不便がないように懸命に手伝いをしてくれた。
腹が膨れて切れなくなった足の爪を切ってくれたのも何を隠そうナルトだ。
産まれてからはサクヤを自分の弟のようだと殊の外可愛がってくれている。
半年間をみっちり一緒に過ごしたせいか、「俺も半分はサク坊の父ちゃんだってばよ」とのたまい、温厚なカカシをイラッとさせていたのを知ってるのはイルカだけだ。
冗談なのに、独占欲が強いんだから。
フフっと半ば眠りながら、イルカは口元に笑みを浮かべた。
「それにしてもよう」
「ん~?」
サクヤを遊ばせているのだろう。
キャッキャという声とともに、ナルトの少し深刻そうな声が聞こえてくる。
「サク坊、一人っ子じゃ寂しくねぇか?」
そんな風に言われて、カカシはフムとご機嫌に笑っている愛息子を見やる。
カカシもイルカも、そして目の前にいるナルトも一人っ子だ。
カカシの父親は早くに亡くした妻に操だてしてか、はたまた面倒だったのか後添えをもたなかった。
イルカは九尾の厄災で両親を亡くしてるし、ナルトに至っては生まれた直後に失った。
考えてみれば自分たちが子供の頃は、忍界大戦や厄災やらでいっぱいいっぱいだったから、そんなことを思ったこともなかったのだが。
「俺は、たまに兄弟がいればなぁと思ったってばよ」
「・・・・・」
「兄弟のいる奴が羨ましくてよ・・・」
だからサスケを兄弟みたいに思ったのかもしれねーけど。
そう呟いて、照れ隠しなのかナルトはニシシと笑って頭をかいた。
「サク坊だって、きっと兄弟が欲しいってば」
なぁ~というナルトに、サクヤが同じように首を傾げながらなぁ~と答える。
兄弟と言っても。
自分たちの場合はそんなに簡単に望めるものではないと、カカシは思案する。
第一、イルカが第二子を儲けることに由と言うとはとても思えない。
「ん~、といってもうちはねぇ・・・」
気のない返事をするカカシに、ナルトが唇を付き出した。
「こんなに可愛いんだぜ。カカシ先生だってもう一人欲しいだろ?」
欲しい。
それはもちろん欲しいに決まってるが。
抱き上げたサクヤがびよーんと伸びて小さな足をぴょこぴょことさせているのに、相好を崩しながらカカシは頷く。
「サク坊を兄ちゃんにしてやってくれよ!」
「よー!」
ナルトの真似をして声を出すサクヤに、カカシはデレッと目尻を下げた。
それでも。
「ま、オレだけが決める問題じゃないから」
「・・・イルカ先生はいらねぇって?」
聞いたことはないが、多分賛成はしないだろう。
だって、そもそも彼は男なのだから。
「反対したら、また騙して飲ませちまうってのは?」
「お前ねぇ・・・」
悪い奴めと睨みつけるも、悪くない提案だと頭の片隅で別の自分が囁く。
なんせ産まれてきたサクヤはイルカに似て表情も豊かで何とも子供らしく愛らしい。
この可愛さをもう一度・・・と、誰もが思うのではないだろうか?
そう、イルカだってきっと・・・。
「でも・・・産んでもらおうにも、もう薬がないしね」
禁術、いや、禁薬扱いになったあの薬のデータは、今や里の機密指定事項となりどこかに封印されているはずだ。
「・・・んなこと言って、コピーしてあるんだろ?」
写輪眼のカカシがそんなヘマしねぇよな。
ナルトが見たこともないぐらい悪い顔をしてカカシにニヤリと笑いかけた。
「・・・まぁ・・・」
アンコに一番最初に成分分析のデータを見せてもらった時、しっかりとコピーしておいた。
もちろんその後自分でもちゃんと調べてある。
作ろうと思えば作れないわけじゃない。
「ただ、材料集めが結構大変なのよ」
「何が必要なんだってば」
身を乗り出してくるナルトに、えーっとと、書きだそうと巻物を開いた所で、スパーンと襖を開く音がしてイルカが寝室から転がり込んできた。
「わぁ!」
驚く二人に、イルカの怒りの拳骨がゴツンッ!!!と力いっぱい頭頂部に落とされて。
「・・・ナルト・・・、カ、カカシさん・・・」
ブルブルと震えながら、『俺は絶ッ対に産まねぇからなーーーッ!!!』と叫ぶイルカの怒声は、アパートを超えて三軒先まで轟いたという。
おしまい♪
ベッドの中でまどろみの中をウトウトと、夢と現をさまよっていたイルカの耳に馴染んだ声が聞こえてきた。
お邪魔しまーすという声とともに、カカシのいらっしゃいと迎える声が聞こえる。
声の主はナルト。
言わずと知れた二人の教え子だ。
「イルカ先生は?」
「まだ寝てるよ」
「もう昼だってばよ」
「昨夜は遅かったからね~」
もう少し寝かせてあげてと、恋人の優しい声がする。
「サク坊、お前の母ちゃんは寝坊助だってばよ」
おい、ナルト。
俺は断じて母ちゃんじゃねぇぞ。
イルカはまだはっきりとしない頭で教え子に突っ込んだ。
「なー!」
「う~」
言われてる意味の分からないサクヤが、ナルトに笑いかけられて楽しそうな声をあげていた。
サクヤが産まれてから、ナルトはこの家をよく訪れるようになった。
まぁ、昔から何かと言っては来ていたのだが。
カカシがイルカと綱手による約半年の報復任務につかされている間も、腹の膨れたイルカに不便がないように懸命に手伝いをしてくれた。
腹が膨れて切れなくなった足の爪を切ってくれたのも何を隠そうナルトだ。
産まれてからはサクヤを自分の弟のようだと殊の外可愛がってくれている。
半年間をみっちり一緒に過ごしたせいか、「俺も半分はサク坊の父ちゃんだってばよ」とのたまい、温厚なカカシをイラッとさせていたのを知ってるのはイルカだけだ。
冗談なのに、独占欲が強いんだから。
フフっと半ば眠りながら、イルカは口元に笑みを浮かべた。
「それにしてもよう」
「ん~?」
サクヤを遊ばせているのだろう。
キャッキャという声とともに、ナルトの少し深刻そうな声が聞こえてくる。
「サク坊、一人っ子じゃ寂しくねぇか?」
そんな風に言われて、カカシはフムとご機嫌に笑っている愛息子を見やる。
カカシもイルカも、そして目の前にいるナルトも一人っ子だ。
カカシの父親は早くに亡くした妻に操だてしてか、はたまた面倒だったのか後添えをもたなかった。
イルカは九尾の厄災で両親を亡くしてるし、ナルトに至っては生まれた直後に失った。
考えてみれば自分たちが子供の頃は、忍界大戦や厄災やらでいっぱいいっぱいだったから、そんなことを思ったこともなかったのだが。
「俺は、たまに兄弟がいればなぁと思ったってばよ」
「・・・・・」
「兄弟のいる奴が羨ましくてよ・・・」
だからサスケを兄弟みたいに思ったのかもしれねーけど。
そう呟いて、照れ隠しなのかナルトはニシシと笑って頭をかいた。
「サク坊だって、きっと兄弟が欲しいってば」
なぁ~というナルトに、サクヤが同じように首を傾げながらなぁ~と答える。
兄弟と言っても。
自分たちの場合はそんなに簡単に望めるものではないと、カカシは思案する。
第一、イルカが第二子を儲けることに由と言うとはとても思えない。
「ん~、といってもうちはねぇ・・・」
気のない返事をするカカシに、ナルトが唇を付き出した。
「こんなに可愛いんだぜ。カカシ先生だってもう一人欲しいだろ?」
欲しい。
それはもちろん欲しいに決まってるが。
抱き上げたサクヤがびよーんと伸びて小さな足をぴょこぴょことさせているのに、相好を崩しながらカカシは頷く。
「サク坊を兄ちゃんにしてやってくれよ!」
「よー!」
ナルトの真似をして声を出すサクヤに、カカシはデレッと目尻を下げた。
それでも。
「ま、オレだけが決める問題じゃないから」
「・・・イルカ先生はいらねぇって?」
聞いたことはないが、多分賛成はしないだろう。
だって、そもそも彼は男なのだから。
「反対したら、また騙して飲ませちまうってのは?」
「お前ねぇ・・・」
悪い奴めと睨みつけるも、悪くない提案だと頭の片隅で別の自分が囁く。
なんせ産まれてきたサクヤはイルカに似て表情も豊かで何とも子供らしく愛らしい。
この可愛さをもう一度・・・と、誰もが思うのではないだろうか?
そう、イルカだってきっと・・・。
「でも・・・産んでもらおうにも、もう薬がないしね」
禁術、いや、禁薬扱いになったあの薬のデータは、今や里の機密指定事項となりどこかに封印されているはずだ。
「・・・んなこと言って、コピーしてあるんだろ?」
写輪眼のカカシがそんなヘマしねぇよな。
ナルトが見たこともないぐらい悪い顔をしてカカシにニヤリと笑いかけた。
「・・・まぁ・・・」
アンコに一番最初に成分分析のデータを見せてもらった時、しっかりとコピーしておいた。
もちろんその後自分でもちゃんと調べてある。
作ろうと思えば作れないわけじゃない。
「ただ、材料集めが結構大変なのよ」
「何が必要なんだってば」
身を乗り出してくるナルトに、えーっとと、書きだそうと巻物を開いた所で、スパーンと襖を開く音がしてイルカが寝室から転がり込んできた。
「わぁ!」
驚く二人に、イルカの怒りの拳骨がゴツンッ!!!と力いっぱい頭頂部に落とされて。
「・・・ナルト・・・、カ、カカシさん・・・」
ブルブルと震えながら、『俺は絶ッ対に産まねぇからなーーーッ!!!』と叫ぶイルカの怒声は、アパートを超えて三軒先まで轟いたという。
おしまい♪
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