「あー・・・雨かぁ・・・」
曇り空を見上げボソリと呟いたイルカに、読んでいた愛読書から眼を離した。
「雨はなぁ・・・」
ハァ、と溜息ひとつ。
雨が何だというのだろう、あまりの落胆ぶりについ気になった。
「雨がどうかしたの?」
「んー・・」
「イルカ?」
「・・・明日、七夕なんだよ」
七夕。そう言えばそんな日があったようななかったような。
うろ覚えの記憶を頭の片隅で探る。
「アカデミーで、笹の葉飾って短冊書いて・・ってお前書いてねぇの?」
「・・・・・」
黙ったままのカカシに、イルカが眉を釣り上げる。
「受付で配ってただろ。書けたら回収ボックスに入れとけって」
「・・あぁ」
「書いてねぇな」
思い出したように頷いたカカシに、咎めるような視線を寄こした。
すっかり忘れていた。
数日前、机の上で何か楽しそうに束ねているイルカを見ていたというのに。
そういやあれは子供たちの書いた短冊だったか。
「明日、課外授業で七夕祭りの予定だったんだけど、コレじゃ無理だな・・・」
とても止みそうもない大振りに、ガックリと肩を落とす。
「七夕祭りねぇ」
「んだよ」
そんな授業、アカデミーであっただろうか?
時代が時代だったため、アカデミー在籍期間が短かったカカシには覚えのない行事だった。
教師ゆえか、イルカは意外とイベント事は好きだ。
授業で行うことも関係しているのだろうが春夏秋冬何かしらイベントを企画担当している。
普通なら面倒がってやりたがらない事も率先してやっているのだから立派だと思う。
それにしても。
「イルカはなんでそんなにガッカリしてるわけ?」
企画したイベントが雨で流れるのは残念だろうけどと呟いたカカシに、イルカがムッと唇をへの字に曲げる。
「だって会えねぇじゃん」
「ん?」
「・・・彦星と、織姫」
「・・・・・」
ただの物語にそこまで意気消沈することもないだろうと思うのだが、ボソリと呟いたまま俯いてしまう。
「一年に一回しか逢えねぇのに」
「ま、この時期は雨も多いから」
「そうなんだけど」
「子供達も残念がるし?」
「それもある・・けど・・・」
「・・・?」
「・・・願い事・・」
「・・・・・」
ごにょごにょと口ごもるイルカに、何だと首を傾げた。
イルカ自身のだろうか?
普段お願いなどほとんど口にしないイルカの願い事に興味がわいた。自分に出来ることならなんだって叶えてやりたい。
「イルカは何をお願いしたわけ?」
「べっ、別に何でもいいだろ」
急に慌てだしたイルカに、訝しげな視線を送る。
「オレに言えないこと?」
「・・・・・」
頑固そうに唇を引き結んだイルカが、ムウッと眉を寄せる。
「ここで言わなくても、アカデミーにいけばわかっちゃうでしょ」
「カカシは来んな」
「なにそれっ!?」
「良いから来んなッ!」
もうこの話はおしまいだと立ち上がったイルカの手をすかさず捕まえた。
「隠すほど知りたくなるのが人の心って言うでしょ。さっさと吐きなさいよ」
「やだ」
「この強情っ張り」
ここまで来るとカカシも意地になってくる。
逃れようとするイルカを捕まえて、強引に床に転がした。
「わぁっ!」
ドサリと音をたて、倒れこんだ身体を押さえつける。
心なしか赤くなっている顔を見ながら、両手を纏めて頭上で掴んだ。
「言わないとこうだからね」
「ーーーぎゃっ!!」
忍服の裾を捲りあげ、脇腹を擽る。
ついでに脇の下にも唇を付けて舐め上げた。
「わあぁーーッ! や、やだって、カカシッ!!!」
「さっさと吐いちゃいなさい」
「絶対ヤダーーッ!」
両脚をバタバタとさせ必死に顔を左右に振って抵抗するイルカに、ついついカカシも擽りに本腰が入る。
「ヤメろーーーって・・・あぁっ・・」
ゲラゲラ笑いながら暴れていたイルカが、不意に色っぽい声を出した。
「・・・・・」
自分で出した声に驚いたのか、真っ赤になり慌てて顔を逸らしたイルカの頬を撫ぜると、唇をむにっと指先で押してみる。
「う・・・」
「・・・まったく」
ぽってりした唇に吸い付いて、啄みながらチュッと音をたてた。
捕まえていた腕を離し、瞳を潤ませ誘うような表情をするイルカの身体に乗り上げて、貪るように口付ける。
「ーーんんっん・・」
鼻にかかった吐息を漏らすイルカの腕が、縋るように背中に回された。
そんな仕草にこっそりと笑いながら、これから行う行為のために結ばれた黒髪を愛しげに解くのだった。
*****
アカデミーに飾られた笹の葉を前にして暫く思案する。
ヒラヒラと揺れる沢山の短冊の中から、一枚の短冊を見つけるとカカシはおもむろにそれを手にとった。
昨夜、いくら攻めてもけして口を割らなかった強情な幼馴染の顔を思い出し、クスリと笑う。
『ずっと一緒に暮らせますように』
そう書かれた短冊に、イルカの名前はない。
けれど、大らかで肉厚な文字には嫌というほど見覚えがあった。
「あたりまえだーよ」
そう呟いて、自らも書き記した短冊を隣に括りつけた。
もう二度と手放したりしない。
イルカが願わなくても、そう決めているのだから。
曇り空を見上げボソリと呟いたイルカに、読んでいた愛読書から眼を離した。
「雨はなぁ・・・」
ハァ、と溜息ひとつ。
雨が何だというのだろう、あまりの落胆ぶりについ気になった。
「雨がどうかしたの?」
「んー・・」
「イルカ?」
「・・・明日、七夕なんだよ」
七夕。そう言えばそんな日があったようななかったような。
うろ覚えの記憶を頭の片隅で探る。
「アカデミーで、笹の葉飾って短冊書いて・・ってお前書いてねぇの?」
「・・・・・」
黙ったままのカカシに、イルカが眉を釣り上げる。
「受付で配ってただろ。書けたら回収ボックスに入れとけって」
「・・あぁ」
「書いてねぇな」
思い出したように頷いたカカシに、咎めるような視線を寄こした。
すっかり忘れていた。
数日前、机の上で何か楽しそうに束ねているイルカを見ていたというのに。
そういやあれは子供たちの書いた短冊だったか。
「明日、課外授業で七夕祭りの予定だったんだけど、コレじゃ無理だな・・・」
とても止みそうもない大振りに、ガックリと肩を落とす。
「七夕祭りねぇ」
「んだよ」
そんな授業、アカデミーであっただろうか?
時代が時代だったため、アカデミー在籍期間が短かったカカシには覚えのない行事だった。
教師ゆえか、イルカは意外とイベント事は好きだ。
授業で行うことも関係しているのだろうが春夏秋冬何かしらイベントを企画担当している。
普通なら面倒がってやりたがらない事も率先してやっているのだから立派だと思う。
それにしても。
「イルカはなんでそんなにガッカリしてるわけ?」
企画したイベントが雨で流れるのは残念だろうけどと呟いたカカシに、イルカがムッと唇をへの字に曲げる。
「だって会えねぇじゃん」
「ん?」
「・・・彦星と、織姫」
「・・・・・」
ただの物語にそこまで意気消沈することもないだろうと思うのだが、ボソリと呟いたまま俯いてしまう。
「一年に一回しか逢えねぇのに」
「ま、この時期は雨も多いから」
「そうなんだけど」
「子供達も残念がるし?」
「それもある・・けど・・・」
「・・・?」
「・・・願い事・・」
「・・・・・」
ごにょごにょと口ごもるイルカに、何だと首を傾げた。
イルカ自身のだろうか?
普段お願いなどほとんど口にしないイルカの願い事に興味がわいた。自分に出来ることならなんだって叶えてやりたい。
「イルカは何をお願いしたわけ?」
「べっ、別に何でもいいだろ」
急に慌てだしたイルカに、訝しげな視線を送る。
「オレに言えないこと?」
「・・・・・」
頑固そうに唇を引き結んだイルカが、ムウッと眉を寄せる。
「ここで言わなくても、アカデミーにいけばわかっちゃうでしょ」
「カカシは来んな」
「なにそれっ!?」
「良いから来んなッ!」
もうこの話はおしまいだと立ち上がったイルカの手をすかさず捕まえた。
「隠すほど知りたくなるのが人の心って言うでしょ。さっさと吐きなさいよ」
「やだ」
「この強情っ張り」
ここまで来るとカカシも意地になってくる。
逃れようとするイルカを捕まえて、強引に床に転がした。
「わぁっ!」
ドサリと音をたて、倒れこんだ身体を押さえつける。
心なしか赤くなっている顔を見ながら、両手を纏めて頭上で掴んだ。
「言わないとこうだからね」
「ーーーぎゃっ!!」
忍服の裾を捲りあげ、脇腹を擽る。
ついでに脇の下にも唇を付けて舐め上げた。
「わあぁーーッ! や、やだって、カカシッ!!!」
「さっさと吐いちゃいなさい」
「絶対ヤダーーッ!」
両脚をバタバタとさせ必死に顔を左右に振って抵抗するイルカに、ついついカカシも擽りに本腰が入る。
「ヤメろーーーって・・・あぁっ・・」
ゲラゲラ笑いながら暴れていたイルカが、不意に色っぽい声を出した。
「・・・・・」
自分で出した声に驚いたのか、真っ赤になり慌てて顔を逸らしたイルカの頬を撫ぜると、唇をむにっと指先で押してみる。
「う・・・」
「・・・まったく」
ぽってりした唇に吸い付いて、啄みながらチュッと音をたてた。
捕まえていた腕を離し、瞳を潤ませ誘うような表情をするイルカの身体に乗り上げて、貪るように口付ける。
「ーーんんっん・・」
鼻にかかった吐息を漏らすイルカの腕が、縋るように背中に回された。
そんな仕草にこっそりと笑いながら、これから行う行為のために結ばれた黒髪を愛しげに解くのだった。
*****
アカデミーに飾られた笹の葉を前にして暫く思案する。
ヒラヒラと揺れる沢山の短冊の中から、一枚の短冊を見つけるとカカシはおもむろにそれを手にとった。
昨夜、いくら攻めてもけして口を割らなかった強情な幼馴染の顔を思い出し、クスリと笑う。
『ずっと一緒に暮らせますように』
そう書かれた短冊に、イルカの名前はない。
けれど、大らかで肉厚な文字には嫌というほど見覚えがあった。
「あたりまえだーよ」
そう呟いて、自らも書き記した短冊を隣に括りつけた。
もう二度と手放したりしない。
イルカが願わなくても、そう決めているのだから。
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