ちゃぶ台の上に小さな指を引っ掛けて、ぷにぷにの足が踏ん張った。
「ん、しょ」
ぎこちない動きでおむつをした大きなお尻がゆっくりと持ち上がると、「すごいじゃない」という感心しきった声が聞こえてきて、イルカは笑いながら振り返った。
「このあいだから一人でつかまり立ちができるようになったんですよ」
「そうなの?」
「ま、歩くよりはいはいする方が得意なので、なかなか披露してくれないんですけどね」
忍犬と一緒にいることが多いせいか、はいはいにかけては犬並みの速さを誇るサクヤだ。本人も思った場所へ移動するにはそちらのほうが楽らしく、任務で家をあけることの多いカカシは知らなかったのだろう。
「少し見ない間に随分と成長するものなんですねぇ」
そう言えば、この間カカシが驚いていたのはサクヤがバイバイと手を振ったことだったろうか? 後ろ髪を引かれまくって任務に出かけていった姿を思い出すと、つい笑いがこみ上げてきた。
「じゃあ、離れていた時間を埋めるためにも少しサクヤを見ていてもらえますか?」
「良いけど、仕事? あ、あぶな・・っ!!」
洗い物を終えて戻ってきたイルカがちゃぶ台の前に座り込むと同時に、バランスを崩したサクヤがごろりと畳に転がるのが見えた。
「あー、またやっちまったか」
「またって、先生っ!?」
畳にぶつけた後頭部は鈍い音をたてたが、とうのサクヤはくるりと体制を入れ替えた後、慌てふためくカカシを見てふぇぇとなんとも情けない声を上げた。カカシが急いで抱き上げる。
「大丈夫だよな、サク」
「あ、頭を打ってましたよっ!? 打ちどころが悪かったら大変なことになるじゃないっ」
必死に小さな後頭部をさすっているが、それぐらいでたんこぶなどできるわけもない。それでなくとも大きな頭を支えきれない体型なのだ。転ぶことなど日常茶飯事、いちいち慌てていたら気が休まる暇もない。親たるものどーんと構えていなくてはやっていられないというのに、過剰なほどに心配するカカシを前に、サクヤの泣き声は更に激しくなる。
「うやあぁーんっ!!」
「どこが痛いの? ちょっと先生っ、笑ってないで見てやってよ」
イルカと二人きりのときはこんなことで泣いたりしないサクヤだ。珍しく構ってもらえたことに甘えているのだと思ったら微笑ましいが、いささか芝居がかってないか。
苦笑しながら近づくと、ポロポロと溢れる涙を拭ってやった。
「自分の背丈より高い場所から落ちなければ大丈夫ですって。ほーら、いい加減泣きやめよ、サク」
「そんな問題!?」
「そんな問題です。思っているより子供の身体ってのは柔軟に出来ているもんですよ」
そういえば、この間は器用に開けたタンスの引き出しを階段にして登っていた。流石にその上から飛ばれた日には肝を冷やしたもんだが、それに比べればなんてことはない。イルカが言ったとおり、腕の中のサクヤは既にケロリとした顔をして涙と鼻水で汚れた顔をカカシの服に擦り付けて拭っている。
「心配してもらえて嬉しかったんだよな」
「あう」
満足そうに頷いたサクヤは、くいっとカカシの口布を引っ張っりおろしたかと思うと口元の黒子を小さな指先でポチリと押した。
「ん〜ぽんっ」
「こーら、それはチャイムじゃねぇぞ」
突起物を見れば押したがるのは最近のサクヤのブームだ。飛び出ているものを見たらとりあえず何でも押してくるが、カカシは何をされているのかわからないようでキョトンとしている。
くくくっ。笑いをこらえながら目線だけでダメだぞと注意して、ほわほわの綿毛みたいな髪を撫ぜた。
「めぇ?」
「そ、ダーメ。あんまり触ってっとでっかくなっちまうからな」
今ぐらいが色っぽくてちょうどいい。心の中で呟いて、口元の黒子をチラ見した。
「・・・あぁ、コレ?」
視線に気づいたカカシがサラリと口元の黒子を指先で撫ぜるのに思わず赤面しそうになる。
イルカは常々カカシの嫌味のように整った素顔は武器だと断言しているが、実際のところ口布で顔を覆っていてくれてありがとうと感謝している節がある。
自他ともに認める面食いのイルカが、見つめられるだけで妊娠すると言われている素顔を直視できようはずもない。
「そ、です」
ぎこちなく目をそらしたイルカに、カカシが顔を近づけてきた。
「触り過ぎたら大きくなるのはココも同じですよね」
「・・・へ?」
言われた意味を理解する間も無く。
狙いすました指先にぷつりと胸の尖りを押しつぶされて、思わずぎゃっと声が出た。
「なにすんですかっ!」
「先生のはいつも可愛がっているから、服の上からでもわかりやすいんですよ」
「な、な・・っ!!」
なんてことを言うんだ。
イルカ自身、もしかしたら少し大きくなっているかもしれないと気にしていたのに。
「かーっ! めぇえっ!!」
顔を真赤にして狼狽えるイルカを前に、頬を膨らませたサクヤが小さな手のひらでピシャリとカカシの顔を叩いて抗議した。
言うなれば「そこは押しちゃダメ!」だろうか。
「なによ、痛いじゃない」
「ぷー」
それもそのはず。
つい先日、サクヤも入浴中にイルカの乳首をピンポンし、厳重注意を受けたところなのだから。
血は争えねぇ・・・。
睨み合う見た目もそっくりな親子をみやって、イルカはガクリと肩を落とした。
「ん、しょ」
ぎこちない動きでおむつをした大きなお尻がゆっくりと持ち上がると、「すごいじゃない」という感心しきった声が聞こえてきて、イルカは笑いながら振り返った。
「このあいだから一人でつかまり立ちができるようになったんですよ」
「そうなの?」
「ま、歩くよりはいはいする方が得意なので、なかなか披露してくれないんですけどね」
忍犬と一緒にいることが多いせいか、はいはいにかけては犬並みの速さを誇るサクヤだ。本人も思った場所へ移動するにはそちらのほうが楽らしく、任務で家をあけることの多いカカシは知らなかったのだろう。
「少し見ない間に随分と成長するものなんですねぇ」
そう言えば、この間カカシが驚いていたのはサクヤがバイバイと手を振ったことだったろうか? 後ろ髪を引かれまくって任務に出かけていった姿を思い出すと、つい笑いがこみ上げてきた。
「じゃあ、離れていた時間を埋めるためにも少しサクヤを見ていてもらえますか?」
「良いけど、仕事? あ、あぶな・・っ!!」
洗い物を終えて戻ってきたイルカがちゃぶ台の前に座り込むと同時に、バランスを崩したサクヤがごろりと畳に転がるのが見えた。
「あー、またやっちまったか」
「またって、先生っ!?」
畳にぶつけた後頭部は鈍い音をたてたが、とうのサクヤはくるりと体制を入れ替えた後、慌てふためくカカシを見てふぇぇとなんとも情けない声を上げた。カカシが急いで抱き上げる。
「大丈夫だよな、サク」
「あ、頭を打ってましたよっ!? 打ちどころが悪かったら大変なことになるじゃないっ」
必死に小さな後頭部をさすっているが、それぐらいでたんこぶなどできるわけもない。それでなくとも大きな頭を支えきれない体型なのだ。転ぶことなど日常茶飯事、いちいち慌てていたら気が休まる暇もない。親たるものどーんと構えていなくてはやっていられないというのに、過剰なほどに心配するカカシを前に、サクヤの泣き声は更に激しくなる。
「うやあぁーんっ!!」
「どこが痛いの? ちょっと先生っ、笑ってないで見てやってよ」
イルカと二人きりのときはこんなことで泣いたりしないサクヤだ。珍しく構ってもらえたことに甘えているのだと思ったら微笑ましいが、いささか芝居がかってないか。
苦笑しながら近づくと、ポロポロと溢れる涙を拭ってやった。
「自分の背丈より高い場所から落ちなければ大丈夫ですって。ほーら、いい加減泣きやめよ、サク」
「そんな問題!?」
「そんな問題です。思っているより子供の身体ってのは柔軟に出来ているもんですよ」
そういえば、この間は器用に開けたタンスの引き出しを階段にして登っていた。流石にその上から飛ばれた日には肝を冷やしたもんだが、それに比べればなんてことはない。イルカが言ったとおり、腕の中のサクヤは既にケロリとした顔をして涙と鼻水で汚れた顔をカカシの服に擦り付けて拭っている。
「心配してもらえて嬉しかったんだよな」
「あう」
満足そうに頷いたサクヤは、くいっとカカシの口布を引っ張っりおろしたかと思うと口元の黒子を小さな指先でポチリと押した。
「ん〜ぽんっ」
「こーら、それはチャイムじゃねぇぞ」
突起物を見れば押したがるのは最近のサクヤのブームだ。飛び出ているものを見たらとりあえず何でも押してくるが、カカシは何をされているのかわからないようでキョトンとしている。
くくくっ。笑いをこらえながら目線だけでダメだぞと注意して、ほわほわの綿毛みたいな髪を撫ぜた。
「めぇ?」
「そ、ダーメ。あんまり触ってっとでっかくなっちまうからな」
今ぐらいが色っぽくてちょうどいい。心の中で呟いて、口元の黒子をチラ見した。
「・・・あぁ、コレ?」
視線に気づいたカカシがサラリと口元の黒子を指先で撫ぜるのに思わず赤面しそうになる。
イルカは常々カカシの嫌味のように整った素顔は武器だと断言しているが、実際のところ口布で顔を覆っていてくれてありがとうと感謝している節がある。
自他ともに認める面食いのイルカが、見つめられるだけで妊娠すると言われている素顔を直視できようはずもない。
「そ、です」
ぎこちなく目をそらしたイルカに、カカシが顔を近づけてきた。
「触り過ぎたら大きくなるのはココも同じですよね」
「・・・へ?」
言われた意味を理解する間も無く。
狙いすました指先にぷつりと胸の尖りを押しつぶされて、思わずぎゃっと声が出た。
「なにすんですかっ!」
「先生のはいつも可愛がっているから、服の上からでもわかりやすいんですよ」
「な、な・・っ!!」
なんてことを言うんだ。
イルカ自身、もしかしたら少し大きくなっているかもしれないと気にしていたのに。
「かーっ! めぇえっ!!」
顔を真赤にして狼狽えるイルカを前に、頬を膨らませたサクヤが小さな手のひらでピシャリとカカシの顔を叩いて抗議した。
言うなれば「そこは押しちゃダメ!」だろうか。
「なによ、痛いじゃない」
「ぷー」
それもそのはず。
つい先日、サクヤも入浴中にイルカの乳首をピンポンし、厳重注意を受けたところなのだから。
血は争えねぇ・・・。
睨み合う見た目もそっくりな親子をみやって、イルカはガクリと肩を落とした。
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