窓から入ってくる風が気持ちいい。
穏やかな日差しについウトウトしてしまいそうになりながら、テストの採点を続けるべくペンを握る。
「んー、理論上は理解してんだけどなぁ」
「ホノカ?」
「あぁ・・、ペーパーじゃ完璧」
そう言いながら、気の強そうな顔を思い浮かべる。
両親ともに上忍で、自らもアカデミーを早く卒業して忍びになりたいと願っている勉強熱心な少女だ。
しかし、術の構成を組み立てる印は、頭では理解していてもそれがすぐに実践出来るわけじゃない。
繰り返し印を結び、頭で考えなくても良いように身体に覚えさせる。
そしてチャクラの安定化と、なにより集中力が必要だ。
「ま、おいおい慣れてくるだろ」
「そうなんだけど」
「イルカらしくねぇな」
言いよどんだイルカに、同僚が訝しげに首を傾げる。
「頭でっかちなだけじゃ駄目なんだって、教えるのも大切かなって」
「まぁな」
非の打ち所のない答案用紙、それが駄目なんだとどう説明すればわかってもらえるだろう。
確かに、戦略諜報部のように頭を使って戦う忍びもいる。
だけど彼らは万が一の時、里を守れるだけの実力も兼ね備えているのだ。
そうまさに・・・。
「あ、はたけ上忍」
「え?」
集中力はどこへやら。
同僚が呼んだ名前につられて、窓の外へ視線をやった。
相変わらずというかなんというか。
右腕にぶら下がるのは里でも美人と評判のくノ一。
手にした本はとても子供には見せられないいかがわしいモノで。
つい先日彼から受けた何やらを思い出して、身体の奥がドクンと疼いた。
駄目だ、考えるなと思うのに、ついつい視線が追ってしまう。
「いつ見てもアレだよなぁ」
「うへっ!?」
変なことを考えていたせいで、妙な声が出てしまった。
ポカンとする同僚に、バサバサと答案用紙をひっくり返してごまかし笑いを返す。
「な・・、なにがアレって?」
「あぁ。いつ見ても連れてる女が違うって」
「・・・・・・」
「あと、女じゃない時はガイさんに絡まれてる」
「ブッ」
思わず吹き出した。
出会い頭に勝負を挑まれて、迷惑そうな顔をしているカカシを思い出す。
それでも何度かは勝負をしている姿を見かけるから、思うほど悪い人じゃないのかもしれない。
勝負と言ってもじゃんけんだったけど。
思い出して、フフフと笑いが漏れた。
その瞬間。
外を歩いていたカカシが、熱心に読んでいた愛読書から視線を上げた。
「ーーーーーッ!」
慌てて覗き込んでいた窓から身体を引き離して仰け反る。
いま、間違いなく眼があった。
なんだ、あの人。頭の上にも眼がついてんのかよと、バクバクと鳴る心臓を抑えながら心の中でごちる。
あの眼。
まるで最初に出会った頃のような冷たい眼だ。
「イルカ?」
「あぁ、いや。いまカカシさんが・・・」
「はたけ上忍ならとっくに行っちまったけど?」
「え?」
再び覗き込んだ窓の下にはその後姿すらなく、イルカは長い溜息をついて窓枠に額を押し付けた。
「お前さぁ・・・はたけ上忍と、なんかあったのか?」
「んーーー?」
「いや、ほら。この間の宴会に三代目の指名で行ってたろ?」
「あぁ・・」
「はたけ上忍にお持ち帰りされたって、大層な噂になってっけど」
「はぁ!?」
「違うのか?」
違わなくもない。確かに一晩同衾したのだから。が、ここは否定すべきだとブルブルと頭を振った。
「んなわけねぇだろ」
「そうなのか?」
「あったりまえだろッ! 第一あの人が女に困ってヤローに手ぇ出すように見えるかよ」
「・・・・見えねぇな」
ただでさえ里の誉れと呼ばれ、選びたい放題、よりどりみどりな上忍だ。
なるほどと納得する同僚に、必死で頷いてハタと気づく。
・・・なんか、注目浴びてねぇか?
見渡してみれば、慌てたように視線を逸らす気配がする。
あの日、いつもより化粧の濃かった巴先生が、視線があった途端そそくさと俯くのにも泣きたい気持ちになった。
噂の発信源発見。
どうりで最近、職員室で居心地が悪いわけだ。
「勘違いはやめてくれよな」
だから、心持ち大きな声でそう宣言した。
ただでさえいつも大きな声だから、それは職員室中に響き渡ったけど、そのほうが好都合だ。
俺は、はたけカカシとは何の関係もない。
たとえ。
「・・・・・」
ベッドの中で、恋人同士のような口付けを交わしたとしても。
「そりゃそうだよなぁ。はたけ上忍じゃなくても、お前はないわ」
「んだよ、その言い方」
「だってお前・・・どうみても」
なんて言いながら、上から下まで視線が動く。
言いたいことはわかってる。
口が裂けても見目麗しいなんて自分でも思ってもいないし、男である以上麗しいなんて言われて喜ぶわけもない。
だけど、あからさまな嘲笑は気分の良いものじゃなくて少しだけムッとした。
気づいた同僚が怒るなよと肩を叩くのに、イルカは言いようのない蟠りを無理やり胸の奥底に抑えこんだ。
*****
アカデミーの帰り道で声をかけられ、店先に並んだサンマをじっと見つめた。
いつも懇意にしている魚屋は、たまにおまけもしてくれる。
ザルに盛られたそれは、はっきりいって破格の値段だ。
「安いだろ」
ニヤリ。魚屋の大将がそう言って笑う。
安い。旬とはいえ確かに安くて、薄給のアカデミー教師には魅力的だ・・・が・・・。
こんもりと盛られたそれは、一人暮らしには流石に量が多かった。
サンマは足が速いから、本日中。最悪でも明日までには食べきりたい。
「どうすっかな・・・」
保存方法を考えてそう呟いた瞬間、スッと隣に並んだ人影に眼をやって息を呑んだ。
「買うの?」
「へっ?」
驚いて見てみれば、銀髪の上忍が一箇所だけ出て入る右眼でくいっと眼の前のサンマを示される。
「あー・・・、ちょっと量が・・」
「量?」
「一人では多いかなって」
答えながら、カカシがこんなところにいるのが信じられなくてついじっと見つめてしまった。
「・・・なに?」
「あ、いえ」
不愉快そうに言われて、不躾だったと慌てて視線をサンマに戻す。
どうしよう。物凄く居心地が悪い。
これはもうサンマを諦めて、今日の晩飯は一楽ですませてしまおう。そうしよう。
そう決めて踵を返そうとした時、いきなり手首を掴まれた。
「ーーーっ!?」
「あんた、料理できる?」
「えっ? あ、はい」
「量が多いんだったら、オレが買うから作ってよ」
「え・・?」
「構わないでしょ?」
さっさと支払いを済ます上忍が、そう言いながらもサンマの袋を手に取った。
はたけカカシとサンマ。はっきり言って似合わない。イメージが激しく崩れる。
なんて言葉は飲み込んで、店から出るカカシの後を慌てて追った。
「料理って言っても、焼くだけですよ」
「いーよ」
「あの、本当に焼くだけなんで、ご自分で・・・」
「やだよ。家が魚くっさくなるじゃない」
振り返りながら、呆れたようにそう言った。
どうやら俺の家はくっさくなっても構わないと言うことらしい。
確かにボロアパートともいうべき古い中忍寮だし、サンマの臭いぐらい気にもしないが、そう言われると良い気はしない。
だけど。
「好物なの」
そう言ってサンマが入った袋をもちあげ、笑う顔にドキリとする。
まるで人格が二つあるかのように、受付での無表情で冷たい態度とは正反対だった。
「家、どっち?」
右? 左? と指先が左右する。
「左です。その、奥の中忍寮で・・・」
「ん」
スタスタと歩いて行ってしまうカカシの後を、イルカは戸惑いながらも小走りに追いかけるのだった。
*****
其処此処に脱ぎ散らかしたアンダーやアカデミーの資料が氾濫する室内を適当に丸く片付けて、出来るまでそこで座っててくださいと伝えると、渡されたサンマを焼くために台所に入った。
カカシといえばキョロキョロと周りを見渡した後、言われたとおりに居間の真ん中にちょこんと置いてある机の前に座った。
男やもめが集まる中忍寮だ。
外観も古いが室内も内壁にヒビが入ったりしてそれ相応にくたびれている。
その一角に、里の誉れと名高い上忍が座っていると、まるでうさぎ小屋に孔雀がいるような違和感がある。
座布団ぐらい出すべきだったかと思ったが、意外と気にしてなさそうなのでそのまま放っておくことにして料理にとりかかった。
何でこんなことになったのかわからないが、とにかくこのサンマを焼いてさっさと帰ってもらおう。
この時のイルカは、本当にただそう決意していた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
二人で二匹ずつ。せっせと焼いたサンマはペロリと食べ尽くされた。
内蔵は綺麗に処理したから、残りは冷蔵庫で明日まで持つだろう。
炊きすぎかと思った米と味噌汁もすっかり空になった。
「旨かったです」
とにかく無心にサンマを食べていたから気づかなかったが、いつの間にか額当ても口布も下げたカカシが素顔を晒していた。
不意に、あの夜の事が脳裏を過ってドキリとする。
体温も何も感じさせないような白い皮膚が上気して、しっとりと汗ばんだ肌が重ねられた。
今はただ、薄く微笑みの形をつくる唇と、あの夜キスしたのだ。
同性なのに。
人工呼吸なんてもんじゃなく、思いっきり性的な感じで。
女とするのと大差ない柔らかさを思い出し、ギュッと唇を噛んだ。
どうしよう、何かがおかしい。
今日はアルコールなんて呑んでない。
それなのに。
「・・・あんたねぇ」
「えーーー?」
苦笑するカカシの目元も、何故だか赤らんでいる様な気がした。
「なんて眼で見るんですか」
そう言われて初めて、自分が食い入るように見つめていることに気がついた。
カカシの素顔から眼が離せなくて、激しく動揺する。
「あ、の・・俺に何かしたでしょう」
「何かってナニ?」
「それは・・・げ、幻術とか・・・」
「・・・写輪眼は閉じてるけど?」
トントンと左眼を叩く。
確かに閉じてる。
だけど、でも・・・。
「・・・・・」
フラフラと誘蛾灯に誘われた虫のように手をのばした。
白い頬に触れて、左側を走る裂傷を指先で優しく撫ぜる。
腰を浮かせれば、引き寄せるように自然とカカシの腕の中に抱き寄せられた。
今はまだ、冷たい氷のような上忍の顔。
あの夜。
腰が切なく疼くような顔して、俺の手の中でイッたくせに。
穏やかな日差しについウトウトしてしまいそうになりながら、テストの採点を続けるべくペンを握る。
「んー、理論上は理解してんだけどなぁ」
「ホノカ?」
「あぁ・・、ペーパーじゃ完璧」
そう言いながら、気の強そうな顔を思い浮かべる。
両親ともに上忍で、自らもアカデミーを早く卒業して忍びになりたいと願っている勉強熱心な少女だ。
しかし、術の構成を組み立てる印は、頭では理解していてもそれがすぐに実践出来るわけじゃない。
繰り返し印を結び、頭で考えなくても良いように身体に覚えさせる。
そしてチャクラの安定化と、なにより集中力が必要だ。
「ま、おいおい慣れてくるだろ」
「そうなんだけど」
「イルカらしくねぇな」
言いよどんだイルカに、同僚が訝しげに首を傾げる。
「頭でっかちなだけじゃ駄目なんだって、教えるのも大切かなって」
「まぁな」
非の打ち所のない答案用紙、それが駄目なんだとどう説明すればわかってもらえるだろう。
確かに、戦略諜報部のように頭を使って戦う忍びもいる。
だけど彼らは万が一の時、里を守れるだけの実力も兼ね備えているのだ。
そうまさに・・・。
「あ、はたけ上忍」
「え?」
集中力はどこへやら。
同僚が呼んだ名前につられて、窓の外へ視線をやった。
相変わらずというかなんというか。
右腕にぶら下がるのは里でも美人と評判のくノ一。
手にした本はとても子供には見せられないいかがわしいモノで。
つい先日彼から受けた何やらを思い出して、身体の奥がドクンと疼いた。
駄目だ、考えるなと思うのに、ついつい視線が追ってしまう。
「いつ見てもアレだよなぁ」
「うへっ!?」
変なことを考えていたせいで、妙な声が出てしまった。
ポカンとする同僚に、バサバサと答案用紙をひっくり返してごまかし笑いを返す。
「な・・、なにがアレって?」
「あぁ。いつ見ても連れてる女が違うって」
「・・・・・・」
「あと、女じゃない時はガイさんに絡まれてる」
「ブッ」
思わず吹き出した。
出会い頭に勝負を挑まれて、迷惑そうな顔をしているカカシを思い出す。
それでも何度かは勝負をしている姿を見かけるから、思うほど悪い人じゃないのかもしれない。
勝負と言ってもじゃんけんだったけど。
思い出して、フフフと笑いが漏れた。
その瞬間。
外を歩いていたカカシが、熱心に読んでいた愛読書から視線を上げた。
「ーーーーーッ!」
慌てて覗き込んでいた窓から身体を引き離して仰け反る。
いま、間違いなく眼があった。
なんだ、あの人。頭の上にも眼がついてんのかよと、バクバクと鳴る心臓を抑えながら心の中でごちる。
あの眼。
まるで最初に出会った頃のような冷たい眼だ。
「イルカ?」
「あぁ、いや。いまカカシさんが・・・」
「はたけ上忍ならとっくに行っちまったけど?」
「え?」
再び覗き込んだ窓の下にはその後姿すらなく、イルカは長い溜息をついて窓枠に額を押し付けた。
「お前さぁ・・・はたけ上忍と、なんかあったのか?」
「んーーー?」
「いや、ほら。この間の宴会に三代目の指名で行ってたろ?」
「あぁ・・」
「はたけ上忍にお持ち帰りされたって、大層な噂になってっけど」
「はぁ!?」
「違うのか?」
違わなくもない。確かに一晩同衾したのだから。が、ここは否定すべきだとブルブルと頭を振った。
「んなわけねぇだろ」
「そうなのか?」
「あったりまえだろッ! 第一あの人が女に困ってヤローに手ぇ出すように見えるかよ」
「・・・・見えねぇな」
ただでさえ里の誉れと呼ばれ、選びたい放題、よりどりみどりな上忍だ。
なるほどと納得する同僚に、必死で頷いてハタと気づく。
・・・なんか、注目浴びてねぇか?
見渡してみれば、慌てたように視線を逸らす気配がする。
あの日、いつもより化粧の濃かった巴先生が、視線があった途端そそくさと俯くのにも泣きたい気持ちになった。
噂の発信源発見。
どうりで最近、職員室で居心地が悪いわけだ。
「勘違いはやめてくれよな」
だから、心持ち大きな声でそう宣言した。
ただでさえいつも大きな声だから、それは職員室中に響き渡ったけど、そのほうが好都合だ。
俺は、はたけカカシとは何の関係もない。
たとえ。
「・・・・・」
ベッドの中で、恋人同士のような口付けを交わしたとしても。
「そりゃそうだよなぁ。はたけ上忍じゃなくても、お前はないわ」
「んだよ、その言い方」
「だってお前・・・どうみても」
なんて言いながら、上から下まで視線が動く。
言いたいことはわかってる。
口が裂けても見目麗しいなんて自分でも思ってもいないし、男である以上麗しいなんて言われて喜ぶわけもない。
だけど、あからさまな嘲笑は気分の良いものじゃなくて少しだけムッとした。
気づいた同僚が怒るなよと肩を叩くのに、イルカは言いようのない蟠りを無理やり胸の奥底に抑えこんだ。
*****
アカデミーの帰り道で声をかけられ、店先に並んだサンマをじっと見つめた。
いつも懇意にしている魚屋は、たまにおまけもしてくれる。
ザルに盛られたそれは、はっきりいって破格の値段だ。
「安いだろ」
ニヤリ。魚屋の大将がそう言って笑う。
安い。旬とはいえ確かに安くて、薄給のアカデミー教師には魅力的だ・・・が・・・。
こんもりと盛られたそれは、一人暮らしには流石に量が多かった。
サンマは足が速いから、本日中。最悪でも明日までには食べきりたい。
「どうすっかな・・・」
保存方法を考えてそう呟いた瞬間、スッと隣に並んだ人影に眼をやって息を呑んだ。
「買うの?」
「へっ?」
驚いて見てみれば、銀髪の上忍が一箇所だけ出て入る右眼でくいっと眼の前のサンマを示される。
「あー・・・、ちょっと量が・・」
「量?」
「一人では多いかなって」
答えながら、カカシがこんなところにいるのが信じられなくてついじっと見つめてしまった。
「・・・なに?」
「あ、いえ」
不愉快そうに言われて、不躾だったと慌てて視線をサンマに戻す。
どうしよう。物凄く居心地が悪い。
これはもうサンマを諦めて、今日の晩飯は一楽ですませてしまおう。そうしよう。
そう決めて踵を返そうとした時、いきなり手首を掴まれた。
「ーーーっ!?」
「あんた、料理できる?」
「えっ? あ、はい」
「量が多いんだったら、オレが買うから作ってよ」
「え・・?」
「構わないでしょ?」
さっさと支払いを済ます上忍が、そう言いながらもサンマの袋を手に取った。
はたけカカシとサンマ。はっきり言って似合わない。イメージが激しく崩れる。
なんて言葉は飲み込んで、店から出るカカシの後を慌てて追った。
「料理って言っても、焼くだけですよ」
「いーよ」
「あの、本当に焼くだけなんで、ご自分で・・・」
「やだよ。家が魚くっさくなるじゃない」
振り返りながら、呆れたようにそう言った。
どうやら俺の家はくっさくなっても構わないと言うことらしい。
確かにボロアパートともいうべき古い中忍寮だし、サンマの臭いぐらい気にもしないが、そう言われると良い気はしない。
だけど。
「好物なの」
そう言ってサンマが入った袋をもちあげ、笑う顔にドキリとする。
まるで人格が二つあるかのように、受付での無表情で冷たい態度とは正反対だった。
「家、どっち?」
右? 左? と指先が左右する。
「左です。その、奥の中忍寮で・・・」
「ん」
スタスタと歩いて行ってしまうカカシの後を、イルカは戸惑いながらも小走りに追いかけるのだった。
*****
其処此処に脱ぎ散らかしたアンダーやアカデミーの資料が氾濫する室内を適当に丸く片付けて、出来るまでそこで座っててくださいと伝えると、渡されたサンマを焼くために台所に入った。
カカシといえばキョロキョロと周りを見渡した後、言われたとおりに居間の真ん中にちょこんと置いてある机の前に座った。
男やもめが集まる中忍寮だ。
外観も古いが室内も内壁にヒビが入ったりしてそれ相応にくたびれている。
その一角に、里の誉れと名高い上忍が座っていると、まるでうさぎ小屋に孔雀がいるような違和感がある。
座布団ぐらい出すべきだったかと思ったが、意外と気にしてなさそうなのでそのまま放っておくことにして料理にとりかかった。
何でこんなことになったのかわからないが、とにかくこのサンマを焼いてさっさと帰ってもらおう。
この時のイルカは、本当にただそう決意していた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
二人で二匹ずつ。せっせと焼いたサンマはペロリと食べ尽くされた。
内蔵は綺麗に処理したから、残りは冷蔵庫で明日まで持つだろう。
炊きすぎかと思った米と味噌汁もすっかり空になった。
「旨かったです」
とにかく無心にサンマを食べていたから気づかなかったが、いつの間にか額当ても口布も下げたカカシが素顔を晒していた。
不意に、あの夜の事が脳裏を過ってドキリとする。
体温も何も感じさせないような白い皮膚が上気して、しっとりと汗ばんだ肌が重ねられた。
今はただ、薄く微笑みの形をつくる唇と、あの夜キスしたのだ。
同性なのに。
人工呼吸なんてもんじゃなく、思いっきり性的な感じで。
女とするのと大差ない柔らかさを思い出し、ギュッと唇を噛んだ。
どうしよう、何かがおかしい。
今日はアルコールなんて呑んでない。
それなのに。
「・・・あんたねぇ」
「えーーー?」
苦笑するカカシの目元も、何故だか赤らんでいる様な気がした。
「なんて眼で見るんですか」
そう言われて初めて、自分が食い入るように見つめていることに気がついた。
カカシの素顔から眼が離せなくて、激しく動揺する。
「あ、の・・俺に何かしたでしょう」
「何かってナニ?」
「それは・・・げ、幻術とか・・・」
「・・・写輪眼は閉じてるけど?」
トントンと左眼を叩く。
確かに閉じてる。
だけど、でも・・・。
「・・・・・」
フラフラと誘蛾灯に誘われた虫のように手をのばした。
白い頬に触れて、左側を走る裂傷を指先で優しく撫ぜる。
腰を浮かせれば、引き寄せるように自然とカカシの腕の中に抱き寄せられた。
今はまだ、冷たい氷のような上忍の顔。
あの夜。
腰が切なく疼くような顔して、俺の手の中でイッたくせに。
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恋の妙薬
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