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 呼び出された火影室。机に頬杖ついて難しい顔をする女傑を前に、ガリガリと髪を掻いた。
「や、ですよ。オレは」
「そういうな」
 犠牲になって欲しいわけじゃない。
 幸せになってほしいだけ。
 里のため。そう言えばカカシが逆らわないことを知っているが、賢い女傑はけして口にはしない。
 何もかもを諦め、ただ死に向かって突き進んでいくだけの男を前に、もう一度考えろと促した。
「アルファの努めってやつですか」
 だから意地悪をしてそう言ってやれば、ギリリと眼光が強められる。
 一触即発の雰囲気を壊したのは、年の功か火影の方だった。
「そういうわけじゃない。なにも無理強いしてまで番を作れなんてあたしゃ言ってないよ」
 自らも独身を貫いた六代目火影は、ため息混じりにリストを机の上に放り投げる。
「会ってみるだけでいい」
 それは、カカシの番になるべく集められたオメガのデータ。
 本来なら一部の者にしか閲覧できない秘匿情報に、唯一出ている眉がピクリと撥ねる。
「お前が選んで良い」
「へぇ。それはまた大盤振る舞いじゃないですか」
 面白半分で手にとって、ペラペラとリストをめくった。
 年齢、性別は多岐にわたる。まさかこんな幼い者までリストに含められるのかと顔を顰めた時、とある人物のデータにピタリとページを捲る手が止まった。
「綱手様」
「なんだ。気に入った者でもいたか?」
 カカシが興味を惹かれた事が嬉しいらしく、机から乗り出すようにして立ち上がる。
「本当に誰を選んでもいいのですか?」
「あぁ、構わん」
「…ではこの人を」
 リストの束から一枚を選んで机に置けば、ニコニコと微笑んでいた綱手の顔が一気に曇った。
「冗談はよせ」
「まさか」
 一生の番にする相手だ。まさか冗談で選ぶわけもない。
 火影や上忍が参集する場で上官に歯向かってくるような面白い男なら、退屈せずに過ごせそうだと思った。
 それにナルトも懐いているとなれば、何かと都合がいいじゃないか。
「他に気に入ったヤツはいないのか?」
「いませんねぇ…この人じゃないならこの話はここまでということで」
 失礼しますと言って踵を返そうとするカカシを、手を伸ばして引き止める。
「…断られるのを前提に選ぶなら、却下せざるを得ないぞ」
「断られますかね?」
 嫌味なほど自信たっぷりな様子に、麗しい顔が渋面を作る。どうにも納得し難いが、カカシが他を選ばないと言っているなら仕方がないと、ドサリと椅子に腰を下ろした。
「よかろう。ただし相手もお前を選んだら、の話だ」
「承知しました。では、オレはこれで」
 くるりと背を向けたカカシを、僅かに細めた瞳で見やる。
 悪い意味で忍が染み付いた男だ。
 そんな男の足元から、微かに聞こえた足音に気がついて目を剥いた。
「…ふん」
 まさか浮かれているのだろうか。あの冷めた眼をした男が。
「綱手様…?」
 吹き出した火影に、やり取りを見守っていたシズネが不審げに首を傾げた。
「ま、せいぜい頑張るんだな」

 それはカカシとイルカが番になる、少し前の出来事。
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1頁目

【恋は銀色の翼にのりて】
恋は銀色の翼にのりて
恋の妙薬
とある晴れた日に

【Home Sweet Home】
Home Sweet Home
もう一度あなたと恋を
夜に引き裂かれても

2頁目

【幼馴染】
幼馴染
戦場に舞う花

【白銀の月よ】
白銀の月よ
愛しい緑の木陰よ
それゆけ!湯けむり木の葉会

あなたの愛になりたい

3頁目

【その他】
Beloved One(オメガバース)
ひとりにしないで(オメガバース)
緋色の守護者(ファンタジー)
闇を駆け抜ける力(人外)
特別な愛の歌(ヤマイル風カカイル)
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