「イルカってさ、はたけ上忍の幼馴染なんだよな」
昼飯後の何とものどかなひと時。
報告所は人気もまばらではっきり言って暇だ。
くわぁと欠伸をこらえることもなく大口開けて伸びをしていたイルカに、隣のイワシが声をかけた。
「・・・まぁな」
隠しても仕方ないし、周知の事実だ。
恋人であることは秘密だが。
「お前が里外任務厳禁とかって、そのせいなのか?」
「・・・・・」
イルカを里外に出すべからず。
それはカカシの上層部への無言の圧力だ。
まさしくその通りなのだが、ここで肯定する訳にはいかない。
過保護に扱うあの幼馴染は、とにかくイルカを里外に出すことを嫌う。
先日誰も適任者がいないという理由でBランクの任務を請け負おうとしたイルカに、彼は激怒した。
激怒だけならまだしも、任務依頼書を火遁で燃やしてしまったのだ・・・。
子供じゃあるまいし。
しかもBランクの任務なら、イルカだって何度もこなしてる。
とうのカカシはというと、SランクどころかSSランクだって勝手に請け負って里外に出ていっちまうのに、この差はどういうわけだろう。
まぁオレの場合、SSランクなら死ぬな。
間違いなく。
イルカはそう考えて小さく頷いた。
「こんなこと言っちゃあなんだけどよぉ、甘やかされてるよな」
イワシの言葉には容赦がない。
昔からの知り合いだし、高ランクの任務を避けたい忍びはここだけの話たくさんいるのだ。
その中でイルカだけが特別に免除されていると、陰口を叩く者だっている。
イワシはその点直球でぶつかってくれる分ありがたい。
しかし!
しかしだ。
イルカにはとても甘やかされていると詰られて、はいそうですよと頷けない理由がある。
「・・・そうでもねぇ」
イルカは思わずそう言いながら顔をしかめた。
キョトンとするイワシが、そんなイルカの苦渋にみちた顔色を窺う。
「違うのか?」
違うというかなんというか。
アレを任務に加えていただけるなら、Sランク、いや、SSランクに匹敵するんじゃないだろうか。
「・・・カカシってさ、任務帰りの性欲がスゲーんだよ」
「・・・・・」
何を言われたのか分からないイワシが、キョトンとした顔のまま固まった。
「抜かずの三発なんて当たり前。しかも、ちょっとヤバめの任務の前はとんでもねぇ抱き方するし」
俺の身体がもたねぇよと愚痴ったイルカに、イワシがゴクリと生唾を飲み込んだ。
実は今も足腰が痛くてさ・・・と呟くイルカの姿はどことなく気だるげだ。
そう言われてみると、ほつれた髪や、目の下の隈がどことなく色っぽく見えなくもない。
心なしか声だっていい感じに掠れてる・・ような気がする。
「そんな風に抱かれると、俺・・・辛くてさ・・・」
耐えかねるように眉をしかめるイルカが、言葉も出せないイワシに向き直ると切ない溜息を漏らした。
「・・・それって、もう最後かもしれないって思って抱いてるわけだろ?」
それは、そうかもしれない。
はたけ上忍クラスが請け負う任務なら、いつだって死と隣り合わせだ。
しかし、それに俺はどう答えたら良いんだよ、イルカァ・・・。
辛いよ。
心なしかうっすらと涙を浮かべてイルカは掌を握りしめた。
「でもな。任務から帰ってきた時は、スゲー嬉しくて」
目元を赤く染めたイルカが、先ほどとはうってかわってふふっとくすぐったそうに笑った。
「もう蕩けちまってドロドロ」
何がドロドロなんですか?とは口が裂けても聞くまい。
絶対に聞きたくない。
耳を両手で塞いでわーっと声をあげようとしたイワシの眼に、一枚の報告書がスッと横切った。
「カカシッ!」
見上げたそこには、あいも変わらず顔が四分の一しか見えていない里の誉れと、嬉しそうに笑うイルカの姿があった。
「ただいま」
表情は読みにくいが、穏やかな声で話す上忍は、報告書を確認するイルカを何とも優しい眼で見つめていた。
「はい! 確認しました。お疲れ様です」
いくらかホッとした様子のイルカがそう言って報告書に判を押す。
見つめ合う視線にハートが何個も飛んでいきそうだ。
書類を確認箱に入れようとしたイルカの手を、カカシがそっと自分の掌で包むと、指の股を綺麗な指先でそっと愛撫する。
途端に真っ赤になるイルカに、カカシが嬉しそうに微笑んだ。
「イルカ、・・・今日は何時まで?」
「ん〜、あと・・」
少しと言いかけた所で、もう見ていられないとイワシがかぶせ気味に声をかけた。
「ーー上がっていいぜ」
「え?」
「いいの?」
二人に見つめられて、イワシは大きく頷いた。
耐えられないんだよ。
この吐きそうな甘さに。
イワシはとにかくこの砂糖菓子より極甘のピンク空間を一掃したかった。
「助かる」
「ありがとね。え〜っと、イワシくん」
里のエリートのこんなデレデレした姿は見たくない。
しかも、こんな淡白そうな顔なのに、絶倫なんだなぁ〜。
イワシは先程のイルカの言葉を思い出して何とも胸がモヤモヤした。
先に行ってるねと声をかけて扉へと向かうカカシに、机の上を片付けていたイルカが、モヤモヤしているイワシに向かってこそっと耳打ちする。
「俺があんな事を思ってるってこと、内緒にしといてくれよな」
唇に人差し指を立てて内緒だと言うイルカに、イワシは何とも力なく頷いた。
イルカよ・・・。
・ ・・お前がはたけ上忍と、いわゆるそういう関係だってことは秘密にしなくても良いのか・・・?
ウキウキと遠ざかっていく二人の姿を見つめながら、イワシは力なく椅子に座り込んだ。
これからドロドロに蕩けちまうんだなぁ・・・。
いや、羨ましくなんてないぞ。
ーーー絶対に!
それよりも、明日どんな顔して会えばいいんだよッ!と心のなかで叫んでイワシは頭を抱えた。
昼飯後の何とものどかなひと時。
報告所は人気もまばらではっきり言って暇だ。
くわぁと欠伸をこらえることもなく大口開けて伸びをしていたイルカに、隣のイワシが声をかけた。
「・・・まぁな」
隠しても仕方ないし、周知の事実だ。
恋人であることは秘密だが。
「お前が里外任務厳禁とかって、そのせいなのか?」
「・・・・・」
イルカを里外に出すべからず。
それはカカシの上層部への無言の圧力だ。
まさしくその通りなのだが、ここで肯定する訳にはいかない。
過保護に扱うあの幼馴染は、とにかくイルカを里外に出すことを嫌う。
先日誰も適任者がいないという理由でBランクの任務を請け負おうとしたイルカに、彼は激怒した。
激怒だけならまだしも、任務依頼書を火遁で燃やしてしまったのだ・・・。
子供じゃあるまいし。
しかもBランクの任務なら、イルカだって何度もこなしてる。
とうのカカシはというと、SランクどころかSSランクだって勝手に請け負って里外に出ていっちまうのに、この差はどういうわけだろう。
まぁオレの場合、SSランクなら死ぬな。
間違いなく。
イルカはそう考えて小さく頷いた。
「こんなこと言っちゃあなんだけどよぉ、甘やかされてるよな」
イワシの言葉には容赦がない。
昔からの知り合いだし、高ランクの任務を避けたい忍びはここだけの話たくさんいるのだ。
その中でイルカだけが特別に免除されていると、陰口を叩く者だっている。
イワシはその点直球でぶつかってくれる分ありがたい。
しかし!
しかしだ。
イルカにはとても甘やかされていると詰られて、はいそうですよと頷けない理由がある。
「・・・そうでもねぇ」
イルカは思わずそう言いながら顔をしかめた。
キョトンとするイワシが、そんなイルカの苦渋にみちた顔色を窺う。
「違うのか?」
違うというかなんというか。
アレを任務に加えていただけるなら、Sランク、いや、SSランクに匹敵するんじゃないだろうか。
「・・・カカシってさ、任務帰りの性欲がスゲーんだよ」
「・・・・・」
何を言われたのか分からないイワシが、キョトンとした顔のまま固まった。
「抜かずの三発なんて当たり前。しかも、ちょっとヤバめの任務の前はとんでもねぇ抱き方するし」
俺の身体がもたねぇよと愚痴ったイルカに、イワシがゴクリと生唾を飲み込んだ。
実は今も足腰が痛くてさ・・・と呟くイルカの姿はどことなく気だるげだ。
そう言われてみると、ほつれた髪や、目の下の隈がどことなく色っぽく見えなくもない。
心なしか声だっていい感じに掠れてる・・ような気がする。
「そんな風に抱かれると、俺・・・辛くてさ・・・」
耐えかねるように眉をしかめるイルカが、言葉も出せないイワシに向き直ると切ない溜息を漏らした。
「・・・それって、もう最後かもしれないって思って抱いてるわけだろ?」
それは、そうかもしれない。
はたけ上忍クラスが請け負う任務なら、いつだって死と隣り合わせだ。
しかし、それに俺はどう答えたら良いんだよ、イルカァ・・・。
辛いよ。
心なしかうっすらと涙を浮かべてイルカは掌を握りしめた。
「でもな。任務から帰ってきた時は、スゲー嬉しくて」
目元を赤く染めたイルカが、先ほどとはうってかわってふふっとくすぐったそうに笑った。
「もう蕩けちまってドロドロ」
何がドロドロなんですか?とは口が裂けても聞くまい。
絶対に聞きたくない。
耳を両手で塞いでわーっと声をあげようとしたイワシの眼に、一枚の報告書がスッと横切った。
「カカシッ!」
見上げたそこには、あいも変わらず顔が四分の一しか見えていない里の誉れと、嬉しそうに笑うイルカの姿があった。
「ただいま」
表情は読みにくいが、穏やかな声で話す上忍は、報告書を確認するイルカを何とも優しい眼で見つめていた。
「はい! 確認しました。お疲れ様です」
いくらかホッとした様子のイルカがそう言って報告書に判を押す。
見つめ合う視線にハートが何個も飛んでいきそうだ。
書類を確認箱に入れようとしたイルカの手を、カカシがそっと自分の掌で包むと、指の股を綺麗な指先でそっと愛撫する。
途端に真っ赤になるイルカに、カカシが嬉しそうに微笑んだ。
「イルカ、・・・今日は何時まで?」
「ん〜、あと・・」
少しと言いかけた所で、もう見ていられないとイワシがかぶせ気味に声をかけた。
「ーー上がっていいぜ」
「え?」
「いいの?」
二人に見つめられて、イワシは大きく頷いた。
耐えられないんだよ。
この吐きそうな甘さに。
イワシはとにかくこの砂糖菓子より極甘のピンク空間を一掃したかった。
「助かる」
「ありがとね。え〜っと、イワシくん」
里のエリートのこんなデレデレした姿は見たくない。
しかも、こんな淡白そうな顔なのに、絶倫なんだなぁ〜。
イワシは先程のイルカの言葉を思い出して何とも胸がモヤモヤした。
先に行ってるねと声をかけて扉へと向かうカカシに、机の上を片付けていたイルカが、モヤモヤしているイワシに向かってこそっと耳打ちする。
「俺があんな事を思ってるってこと、内緒にしといてくれよな」
唇に人差し指を立てて内緒だと言うイルカに、イワシは何とも力なく頷いた。
イルカよ・・・。
・ ・・お前がはたけ上忍と、いわゆるそういう関係だってことは秘密にしなくても良いのか・・・?
ウキウキと遠ざかっていく二人の姿を見つめながら、イワシは力なく椅子に座り込んだ。
これからドロドロに蕩けちまうんだなぁ・・・。
いや、羨ましくなんてないぞ。
ーーー絶対に!
それよりも、明日どんな顔して会えばいいんだよッ!と心のなかで叫んでイワシは頭を抱えた。
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