7

フラフラと一人歩く帰り道。
呑み過ぎた酒は足にきているようだ。
あれほど翌日の仕事のことを考えて少し控えようとしていたのにこのザマだ。

「あ~、呑み過ぎた・・・」

またな! そう言って酔いつぶれたライドウを担いで手を振るゲンマに頭を下げ、二人の背中を見送った。
こんなとき、一抹の寂しさを感じるのは自分だけなのだろうかと、そう思いながらも家路を急ぐ。
とにかく早く帰って、声が出るぐらい熱い湯に浸かってそのまま布団に潜り込むのだ。
酒が回った頭でそんなことを考えていたから、自分の部屋の前に立つ気配に気づくのが遅れた。
瞬間的に伸びたホルダーに手をかけ、外気で冷たくなったクナイの輪に指先を引っ掛ける。
けれど目視した人物の姿に驚いて、手にしたクナイを落としそうになった。

「・・・カカシ・・さん?」
「・・遅い」

扉にもたれかかり、いつもにもまして背中を曲げた人物は、不機嫌な様子を隠そうともせずに手にした袋を差し出した。

「えっ・・は?」
「お土産」
「・・・ありがとうございます」

覗き込んだ袋の中にはびっしりと詰められた茄子と折り詰め。意味がわからずにカカシの顔と交互に見やればスンっと鼻をヒクつかされた。

「・・・呑んできたの?」
「あぁ、はい。ゲンマさん達と少し」
「へぇ」

興味なさげな相槌に、聞いたのはアンタの方だろうという文句はかろうじで堪えた。



*****



「わっ・・! 卯月の三段重・・」

茄子まみれの袋から取り出して、あまりの豪華さに思わず声が漏れた。
三代目お気に入りの高級料亭卯月の重箱はずしりと重い。
しかし悲しいかな、ゲンマの奢りで満腹になった腹では、とてもこの量を食べきれそうもなかった。
勿体無いな。
そう思いつつ、台所の柱の陰から居間の真ん中に座り込んでいるカカシを見やる。
相変わらずボロアパートにそぐわない男だ。
今日だって何の約束していたわけでもなく、当然のように家に上がり込んできたカカシに困惑を隠し切れないでいた。
これじゃあ当初の予定だった熱い風呂どころか布団に潜り込むことすら出来やしない。

「あのー、これ・・」

思い切って声をかければ、唯一出ている右目が細められる。

「ありがとうございます」

三段重を掲げて見せれば、小さく頷いて傍までやってきた。

「受付に見に行ったら、帰った後だったから一緒に食べようと思って買ってきたんだけど、いつまでたっても帰ってこないし」
「・・はぁ」
「しかもゲンマと呑みにいくとか、信じられない」
「スミマセン」

何度も言うようだが、けして約束をしていたわけじゃない。
一体どれ位部屋の前で待っていたのかわからないが、なんだか責められている口調に困惑した。
納得できないがとりあえず謝罪して、袋の中に入ったままだった茄子を取り出した。
ツヤツヤに光った新鮮な茄子に、そういや好物だと言っていたことを思い出す。

「味噌汁つくりましょうか」
「・・・なに、それでご機嫌とろうっての」
「そういうつもりじゃ・・」
「作って」

そう言って鼻を鳴らし、またふらりと居間へと戻ってしまう。
一緒に食べると言っていたからたぶんコレも食べるんだろうと、ぎっしりつめ込まれた重箱の蓋を開けてみる。

「うおぉ・・!」

アワビを筆頭に伊勢海老、雲丹にイクラの海鮮三昧。肉だってローストビーフに和牛のステーキ。イルカがめったに口にできない高級食材の嵐に満腹の胃が隙間をあける。
いかん、こんな時間からと思いつつ、どっと溢れた唾液を飲み込んだ。
・・・仕方ない。
食べ過ぎた分は明日消費すればいいと決意して、イルカは味噌汁を作るべく鍋を掴むのだった。
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1頁目

【恋は銀色の翼にのりて】
恋は銀色の翼にのりて
恋の妙薬
とある晴れた日に

【Home Sweet Home】
Home Sweet Home
もう一度あなたと恋を
夜に引き裂かれても

2頁目

【幼馴染】
幼馴染
戦場に舞う花

【白銀の月よ】
白銀の月よ
愛しい緑の木陰よ
それゆけ!湯けむり木の葉会

あなたの愛になりたい

3頁目

【その他】
Beloved One(オメガバース)
ひとりにしないで(オメガバース)
緋色の守護者(ファンタジー)
闇を駆け抜ける力(人外)
特別な愛の歌(ヤマイル風カカイル)
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